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タカーシャ
タカーシャ
novelistID. 70952
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無口な友人

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『無口な友人』

その存在は、まるで深い湖のようです。
静かで、表面には何も映らないこともあるけれど、
底には、誰にも見えない世界が広がっている。

何を考えているのか分からない。
けれど、それは「何も考えていない」ということではない。
むしろ、考えすぎて、言葉にしきれないだけかもしれない。
あるいは、言葉にしてしまうことで
壊れてしまう「なにか」を、
必死に守っているのかもしれない。

無口な友人は、
笑わないように見えて、ふと目が合ったときに
少しだけ目尻がゆるんでいたりする。

しゃべらないけれど、
そっと差し出す缶コーヒーに、
「おまえのこと、ちゃんとわかってるぞ」
というメッセージが込められているような気がする。

わからないままで、いいのかもしれない。
わからないままでも、そばにいられる関係。
それが、ほんとうの「信頼」なのかもしれない。





知りたい。
未来のこと。
無口な君の、心の中。

だけど
言葉にしてしまえば壊れそうで
触れたくても触れられない
凍った湖面のような距離が
いつもそこにある。

君は笑わない。
でも、何かを隠してる笑わなさだと
なぜか、わかってしまう。
黙っていることが
君の優しさかもしれないと
気づいた日の、胸のざわめき。

未来がどうなるか、
ほんとうは誰にもわからない。
でも、君のそばにいる未来なら
知りたいと思う。
その時、
君の心の中に
わたしが映っていたら――

それで十分なんだ。




それでも、
何も言わない君の
力になりたいと思ってしまう。

理由なんていらない。
ただ、不安があるなら支えたいし、
願いがあるなら一緒に信じたい。

無口なその奥にあるもの――
たとえ全部は分からなくても
「わかろうとする」ことで、
少しでも近づける気がするから。

たとえば、
君が夜空を見上げてるとき、
その視線の先に
何を想っているのか知りたい。

たとえば、
君がポケットに手を入れて歩くとき、
握りしめているのは
さみしさか、強がりか、それとも…希望か。

聞けなくても、
答えてくれなくてもいい。
でも、君の「何か」になることを
あきらめたくない。

沈黙の向こうにある声を
いつか、風のように感じられたら
それだけで、
きっと生きててよかったと思えるから。



そんな人、いるよね。
聞いても答えない。
正面から向き合おうとすると、
ふっと目をそらし、
まるで煙のように逃げてしまう。

けれど、
こちらが困っているとき、
こちらが弱っているとき、
何も言わずにそばに来て、
必要なものを、
必要なタイミングで差し出してくれる。

「大丈夫か」なんて言わない。
でも、黙って肩を貸してくれる。
そんなふうに
自分のことは何一つ語らず、
他人の支えになることを
当然のようにしてしまう。

毎日、何を考えているのか。
どんな風に自分の時間を生きているのか。
どれだけの孤独や葛藤を
飲み込んできたのか。

わからない。
だけど、
きっとその沈黙には、
誰かを守りたかった過去や、
何かを言えなかった痛みがある。

語らないのは、弱さではない。
優しさの形を、
彼は知りすぎてしまったのかもしれない。
作品名:無口な友人 作家名:タカーシャ