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タカーシャ
タカーシャ
novelistID. 70952
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それでも人間は、自然の子

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『手つかずの場所は、地球の歴史そのもの』

地図にない場所に憧れたことがある。
誰の足跡もない道、誰の声も届かない森。
そんな場所に、なぜか心が惹かれるのは、
そこに「人間よりもはるかに長く生きてきた何か」が
確かに存在している気がするからだ。

人間が作った町は便利だ。
建物も道路も整っていて、暮らしやすい。
だけど、人が手を加えた瞬間に、
そこはもう「地球のまま」ではなくなる。

手つかずの場所には、
地球の鼓動がそのまま残っている。

石の形、木のねじれ、風の音、
すべてが地球という星の記憶だ。
それは人の都合ではなく、
数千万年、数億年という時間が描いた風景。

だから私は、ただの岩を見ても、
その奥にある「時間の重さ」に触れた気がする。
そこに名もない草が咲いていたら、
人の知らない物語が、
そっと咲いていたような気さえする。

便利と快適ばかりを求める現代にあって、
「なにもしていない場所」を残すことこそ、
もっとも大切な“守る”という行為かもしれない。

人は、自分が作ったものを誇るけれど、
地球が作ったものを前にすれば、
その誇りさえ、ちっぽけに感じることがある。

手つかずの場所は、地球の歴史そのもの。
私たちはそのほんの一瞬を生きている。
だからこそ──
奪いすぎず、壊しすぎず、
ほんの少しだけ立ち止まって、耳を澄ませたい。
地球の声は、何も語らないけれど、
何よりも雄弁だ。


『それでも人間は、自然の子』

人間も自然の産物。
ならば、人間がつくったもの──
ビルも、スマートフォンも、戦争さえも、
すべて自然の一部なのだろうか?

この問いを胸に、
私は森を歩いてみた。

木々は誰に教わることもなく、空に向かって立っている。
風は誰の許可も取らず、どこまでも吹いてゆく。
何万年も変わらぬ営みが、そこにはある。

そこに、人間はいなかった。
けれど、かつて人間も、
この森の中に生まれた。

動物だった私たちは、道具を持ち、火を使い、
言葉を覚え、社会を築き、
いつしか「自然を離れた」と錯覚するようになった。

でも、本当にそうだろうか?

アリが巣をつくるように、
鳥が巣を編むように、
人が都市を築くのも、ある意味では本能の延長かもしれない。

しかし──

アリは自分の巣を毒で満たしたりしない。
鳥は自分の森を焼いたりしない。

人間だけが、自らを生んだ自然を壊す。
人間だけが、他の生き物にはない“意識”という力で、
自然を逸脱する。

それでも私は思う。
人間だけが壊せるということは、
人間だけが守ることもできるということだ。

この星を壊すのも、人間。
この星を救う意志を持てるのも、人間。

自然の一部でありながら、
自然の全体に責任を持ちうる存在。

それは、重すぎるようでいて、
とても尊い可能性でもある。

だから私は、
ただ自然に帰るだけではなく、
自然に「応える」人間でありたいと思う。

壊した手で、守ること。
奪った知恵で、与えること。

人間の仕業は、自然の一部か。
たぶん、そうだ。
でも、それだけでは済ませたくない。

それでも人間は、
自然の子だから。