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タカーシャ
タカーシャ
novelistID. 70952
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あいつの悪口

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小話『あいつの悪口』

町の小さなベンチで、よく腰かけているおじいちゃんがいる。
名前は佐吉(さきち)さん。80歳。背中は少し曲がったけれど、口は達者。

この日もいつものように、通りかかった近所の若者に話しかける。

「やれやれ、またあいつが来てたよ。あの源(げん)ってやつはほんと、口が軽くてな。昔っからそうだ。すぐ調子に乗るんだよ。まったく、どうしようもない」

若者は苦笑いしながら聞いていた。
でも、何か引っかかって、つい聞いた。

「……でも、昨日もその源さんと将棋してましたよね?」

「うむ。負けたがな。悔しくて夜も眠れんかったわ」

「それって仲いいってことじゃないんですか?」

佐吉さんは、ふっと視線を落とした。
少し照れくさそうに言った。

「まぁな……あいつとは60年の付き合いや。
あいつが黙っとると、なんか心配での。
バカなことでも言ってくれると、安心するんじゃ。
悪口っちゅうのは、わしの健康バロメーターみたいなもんじゃ」

若者は笑った。
佐吉さんも笑った。
その笑い声を、遠くの路地の向こうで、源さんが聞いていた。

「あいつ、またわしの悪口言うとるな」
そう言って、にやりと笑った。
作品名:あいつの悪口 作家名:タカーシャ