目に見えない力 ―インフルエンサーとインフルエンザ―
ふたつの言葉はよく似ている。
インフルエンサーと、インフルエンザ。
片や、スマートフォンの画面を通じて世界を動かす存在。
片や、ひとつのくしゃみで社会を止める存在。
全く違うはずなのに、どこか似ている。
どちらも「目に見えない力」を持っている。
そして、その力は、私たちの暮らしの奥深くに静かに、時に激しく、入り込んでくる。
インフルエンサーは、言葉や画像、動画で人の心を動かす。
「この商品がいいよ」「この生き方が素敵だよ」
そのひとことが、誰かの購買行動を変え、考え方を揺さぶる。
真似したい。近づきたい。知らず知らず、影響を受けている。
一方で、インフルエンザは何も語らない。
ただ静かに、だが確実に、人から人へと伝わっていく。
熱が出て、咳が出て、寝込んでしまう。
仕事が止まり、学校が止まり、経済も一部が鈍る。
それでも私たちは、また次の冬も向き合うことになる。
ふと思う。
情報も、ウイルスも、どこから来て、どこへ行くのだろう。
それをどう受け取り、どう防ぎ、どう活かすのかは、
いつも「わたし」という受け皿に委ねられているのではないか。
インフルエンサーには、発信の責任がある。
インフルエンザには、予防と配慮が必要だ。
どちらも、個人だけでなく、社会全体の姿勢が問われるものだ。
流行という言葉は、風のようにやってきて、風のように去っていく。
けれどその風が運ぶものは、軽くもあり、重くもある。
流されるか、立ち止まるか。
受け取るか、受け流すか。
私たちは、目に見えないものと、どう向き合うのか。
インフルエンサーとインフルエンザ。
二つの「影響力」の時代に生きる私たちに、
問われているのは、自分というフィルターのあり方なのかもしれない。
作品名:目に見えない力 ―インフルエンサーとインフルエンザ― 作家名:タカーシャ