人生の遺伝子という環境
人は、生まれながらにして、身体という「遺伝子」を受け取る。
目の色、骨格、体質、声、あるいは病気へのなりやすさ。
これらはすべて、親から譲り受けた「設計図」のようなものだ。
けれど、人生そのものには、もうひとつの遺伝子があると思う。
それは「環境」という名の、もうひとつの遺伝子だ。
どこに生まれ、どんな人に囲まれ、どんな言葉を浴びて育ったのか。
出会い、出来事、空気感、選択肢の有無──
それらは確かに、目には見えないが、人生を形づくる力を持っている。
身体の遺伝子が細胞をつくるなら、
人生の遺伝子は「思考と感情」をつくるのではないか。
幼いころ、何を信じていいかわからずに傷ついた日。
思いがけないやさしさに触れて、涙があふれた日。
その一つひとつが、自分の「在り方」を決めてきた。
けれど、希望があるのは、
人生の遺伝子は「書き換えられる」ということだ。
環境は、変えられる。
出会いは、新しくできる。
言葉は、かけなおせる。
そして、人生は何度でも、生まれ変われる。
たとえ身体の遺伝子に限界があっても、
人生の遺伝子は、選び直すことができる。
それは、人間という存在に与えられた、最大の可能性ではないだろうか。
だから、私たちは環境を大切にしたい。
自分が置かれている場も、誰かに与える場も。
そこには、人生を変える力があるから。
あなたの今いる場所が、誰かの人生の遺伝子になる。
そう思って、今日も丁寧に、生きていこうと思う。
作品名:人生の遺伝子という環境 作家名:タカーシャ