人生に引退はない
人はよく「引退」という言葉を使う。
仕事を退くとき、ある役割を終えるとき、
それは一つの区切りであり、
しばしば達成や敬意とともに語られる。
だが、よく考えてみれば、
私たちは何も「引退」してなどいない。
日々の暮らしは続き、
心はまだ何かを感じ、考え、選び取っている。
たしかに、年齢や身体の事情で、
ある活動をやめることはある。
しかし、それは「終わり」ではなく、
ただ形を変えた「続き」にすぎない。
人は勝手に「引退」と名づけて、
線を引いて安心したがる。
けれど本当は、新たなスタートを切っているだけだ。
生きている限り、学びも愛も問いも続いていく。
そして何より、誰かの光となる可能性もまた――続いていく。
人生に、引退はない。
あるのはただ、人生そのものの継続である。