生きることは、循環の中にいること ーー 水・風・土・火 ーー
生きるって、決して当たり前のことじゃない。
たとえば、夏の炎天下。
水も飲まず、食事もとらずにいれば、
体はどんどん乾いていき、命は危険にさらされる。
人間の体は、絶え間ない循環の中にある。
水を取り入れ、汗や呼吸で放出し、また補う。
血液がめぐり、酸素を運び、老廃物を流す。
食べたものが消化され、栄養となって全身を巡る。
この循環がどこかで止まれば、
体は悲鳴をあげ、心もまたその影響を受ける。
心も同じように、循環している。
喜びも、悲しみも、怒りも、不安も――
感じることで流れは生まれ、
誰かに話したり、涙を流したり、
笑ったりすることで、また心のめぐりは整っていく。
つまり、「生きる」とは、
体と心が止まらずに巡り続けている状態。
血が流れ、水が巡り、
感情が動き、言葉が生まれる。
その循環があるからこそ、
私たちは今日も立っていられるし、笑っていられる。
だからこそ、自分に問いかけたい。
ちゃんと水を飲んでいるか。
ちゃんと眠れているか。
心をため込んでいないか。
誰かと気持ちを分かち合っているか。
生きるとは、止まらない循環の中にいること。
流れが滞ったときには、少し立ち止まって、
またそっと、流れを取り戻せばいい。
私たちは、いつも、循環の中で生きている。
「水のように、生きる」
生きることは、水のようでありたいと思う。
流れを止めず、
とどまることも、しみわたることもできる存在。
私たちの体は、ほとんどが水でできている。
のどが渇いたら飲み、汗となって出ていく。
涙になり、体温を調整し、
命のすみずみまで、静かに流れている。
水が止まれば、よどむ。
冷たくなり、重くなり、
やがて命の巡りもにぶくなる。
心もまた、水と同じ。
流れていれば、しなやかで澄んでいる。
怒りや悲しみ、迷いや不安――
感じたままに流せばいい。
流せば、濁らない。
流せば、またきれいになる。
人との関係も、水のようにありたい。
押しすぎず、引きすぎず、
ときに受け入れ、ときに手放しながら、
自然にかさなり、寄り添い、
やがてまた、それぞれの道へと流れていく。
水は、かたちを持たない。
けれど、どんな器にもなれる。
それは、私たちの心にも似ている。
固めすぎず、流されすぎず、
やわらかく、でも芯のある流れをつくっていこう。
生きるとは、
水のように、今日もめぐり、しみこみ、
誰かとつながり、自分と向き合いながら、
新しい一日を潤すこと。
あなたの今日の一滴が、
誰かの明日を潤すかもしれない。
「風のように、生きる」
風は見えない。
でも、確かにそこにいて、
そっと揺らし、吹き抜け、運んでいく。
生きることもまた、風のようなものかもしれない。
目に見えないけれど、私たちの中には、
思いや願い、感情や希望が風のようにめぐっている。
風は、強く吹きすぎれば、木々を折る。
でも、そよ風なら、人の頬をやさしく撫でる。
言葉も同じ。
強すぎれば誰かを傷つけ、
やわらかければ心を癒す。
とどまらないこと。
とらわれすぎないこと。
どこかへ向かう流れの中で、
自分の風を感じながら、そっと吹いていくこと。
風は、遠くの香りを運び、
新しい空気を届けてくれる。
私たちもまた、誰かの心に、
やさしい追い風になれるかもしれない。
生きるとは、
風のように、自由でいて、しなやかであること。
「土のように、生きる」
土は、いちばん下にある。
でも、すべての命を支えている。
踏まれても、汚れても、
文句ひとつ言わずに、
種をあたため、芽を育て、
根を張らせて、実りをつくってくれる。
生きることは、土に似ている。
目立たなくてもいい。
静かであってもいい。
誰かの夢や笑顔の、根っこになれたなら、
それだけで価値がある。
土は、休むことも知っている。
冬の間、じっと力を蓄えて、
春になればまた、育む準備をはじめる。
人間も同じ。
働くだけがすべてじゃない。
立ち止まり、深く息を吸い、
眠るように、静かに過ごす日があっていい。
生きるとは、
土のように、黙って支え、
根を信じて、待つことでもある。
「火のように、生きる」
火は、熱を生む。
光を生む。
命を温め、夜を照らし、
人の暮らしに、希望をもたらしてきた。
でも火は、扱いを間違えれば、
すべてを焼き尽くす力も持っている。
やさしい火と、こわい火。
そのどちらも、人の心にある。
生きることもまた、火に似ている。
情熱がある。
怒りがある。
やりたい、という強い思いがある。
あたためたい人がいる。
守りたいものがある。
火を灯すのは、自分の心。
小さくてもいい。
ゆらゆらでもいい。
一度ついた火は、誰かの心にも届く。
火は、何かを変える力を持っている。
凍った心を溶かし、
真っ暗な場所に光を灯す。
希望の火は、小さくても消えない。
疲れたときは、薪をくべよう。
静かに燃やし直そう。
火は無理やり燃やすものではなく、
そっと見守りながら育てるもの。
生きるとは、
火のように、あたたかく、強く、
そして、誰かを照らす光であること。
作品名:生きることは、循環の中にいること ーー 水・風・土・火 ーー 作家名:タカーシャ