ひとりでは、人間になれない
人は、自分以外の誰かがいなければ、自分の存在を認識することができない。
これは、単なる思いつきや詩的な表現ではなく、きっと深い真実だと思う。
鏡がなければ、自分の顔を見ることができないように。
他者という存在がいなければ、「自分」という存在も曖昧なままなのだ。
たとえば、赤ん坊は、誰かに抱かれ、話しかけられ、名前を呼ばれ、泣いたら応えてもらえることで、
「わたしはここにいる」と、少しずつ感じていく。
無反応の世界にいたら、心も言葉も育たない。
誰かのまなざしの中で、自分の輪郭が見えてくる。
誰かの言葉で、自分の名前が形になる。
誰かの心に触れて、ようやく「人」として生き始める。
ひとりで生きることはできるかもしれない。
でも、ひとりで「人間」にはなれない。
「あなた」がいて、「あなた」の目に映ることで
「わたし」はようやく、「わたし」になる。
だからこそ、誰かを大切にすることは、自分を大切にすることと同じなのだと思う。
つながりは、贅沢でも飾りでもなく、人間にとっての「命綱」なのかもしれない。
作品名:ひとりでは、人間になれない 作家名:タカーシャ