きみを、どこから見るか 〜魅力と距離の哲学〜
人の魅力って、不思議なものだ。
はじめは「いいな」と思っていたのに、
近づけば近づくほど、気になるところが増えていく。
「どうしてそんなことを言うんだろう」
「そういう面、見たくなかったな」
そんなふうに、相手の“アラ”ばかりが目についてくる。
まるで絵画を至近距離で見るようなものだ。
筆のムラ、色のにじみ、描き直しのあと。
近づけば近づくほど、粗が浮かび上がってくる。
けれど、その作品全体を一歩引いて見てみるとどうだろう。
色の配置、構図、世界観――
すべてが調和して、その人らしい“魅力”として現れてくる。
私たちは、人の「完璧さ」に惹かれるわけじゃない。
むしろ、少し歪で、少し不器用で、
でも全体として“何かを感じる存在”に心を動かされる。
だからこそ、思うのだ。
人を見るときは、近づきすぎない勇気も必要だと。
よく見ようとしすぎると、見えすぎてしまう。
“見える”ことが、時に“見えなくなる”こともある。
星を見て、あれこれ分析し始めたら、
ただのガスの塊に過ぎないと気づいてしまうだろう。
でも、夜空を見上げて遠くの星を眺めるとき、
人はただ「きれいだ」と言う。
その感覚は、きっと真実だ。
人の魅力も、そんなふうに見たい。
すべてを知ろうとせず、
でも目をそらさず、
ちょうどいい距離から、まるごとを見る。
「好き」は、その場所にある気がする。
きみを、どこから見るか。
それは、そのまま
自分が“どう生きたいか”にもつながっているのかもしれない。
作品名:きみを、どこから見るか 〜魅力と距離の哲学〜 作家名:タカーシャ