ぽっかりと 詩集
ぽっかりと ◯◯◯
それは 穴なのか
ぽっかりあいた 黒い空
それは 口なのか
何かを言いたくて 言えなかったあと
それは 雲なのか
風に流されて かたちのないまま
それは 時間なのか
過ぎたのか 止まっているのかも わからない
それは 心なのか
何かを 失ったのだろうか
それとも――
まだそこに あるものなのか
目に見えないことを
「ぽっかりと」って
人は そっと 表現する
それは さびしさ
それは 希望のよすが
それは まだ言葉にならない “なにか”
【こどもむけの やさしい詩】
ぽっかりと
ぽっかりと あいたもの
それは あな かもしれない
おちたら どこにいくんだろう?
それは くち かもしれない
いいたいのに いえなかった ことばが つまってるのかな?
それは くも かもしれない
ふわふわと そらにうかんで きえていったもの
それは じかん かもしれない
いつのまにか すぎていった たいせつなとき
それは こころ かもしれない
なくした なにかが いまも そこに のこってる
ぽっかりと あいてるのは
かなしいから?
さみしいから?
それとも なにかが これから はじまる まえぶれ?
めに みえないけれど
ぽっかりと してる そのばしょは
とても たいせつな こころの ひみつのへや
【ぽっかりと、あくとき】エッセイ
「ぽっかり」と、あなみたいな気持ちになることがあります。
おなかがすいたときのような、さみしいときのような、なんだかよくわからないけど、こころの中に穴があいてしまったような感覚です。
だれかとケンカしたあと
たいせつな人と わかれたあと
がんばったのに うまくいかなかったとき
そんなときに、「ぽっかり」はやってきます。
でもね、「ぽっかり」は悪いものではありません。
それは、こころが何かを求めているしるし。
何かがたりないと 教えてくれているサインなんです。
ときには、「ぽっかり」の中に やさしさがかくれていたり
ふかく考える時間が はいっていたりします。
「ぽっかり」は、こころのなかの あそびば。
何もないように見えて、本当は大切なことが そこで育っているんです。
だから、「ぽっかり」を感じたら
あわてず、こわがらず、すこしだけ 立ち止まってみましょう。
ぽっかりの中に ふわっと風が通って
そのうち、なにかあたたかいものが すこしずつ 入ってくるから。
【こころのおはなし】
ぽっかりって なあに?
ときどきね
こころが「ぽっかり」することがあります
なにか さみしいような
なにか かなしいような
よくわからないけど
こころのなかに あながあいたみたいな きもち
おともだちと けんかしたとき
だいじな ぬいぐるみを なくしたとき
がんばったのに できなかったとき
そんなときに
「ぽっかり」が やってくるの
「ぽっかり」は わるいものじゃないよ
こころが 「いま ちょっとさびしいよ」って
おしえてくれている サインなの
そのままにしておくと
ぽっかりは すこしずつ ふくらんで
なみだが でてくることもあるんだ
でもね
やさしいことばや ぎゅってしてくれること
わらったり うたったり そらをみたりすると
ぽっかりのあなに
あたたかい なにかが すこしずつ はいってくるの
こころは ふしぎな おへやみたいなもの
からっぽになると なにか たいせつなものが はいってくるよ
だからね
「ぽっかり」したときは
だいじに だいじに してあげてね
【ぽっかりちゃん】
なまえ:ぽっかりちゃん
せいかく:しずかで やさしくて ちょっぴりさみしがり
すんでいるところ:みんなのこころの すみっこ
すきなこと:しずかなじかん、そらをながめること、やさしいことばをきくこと
きらいなこと:おこられること、ないたままにされること、ひとりぼっち
【ぽっかりちゃんのものがたり】
あるひ こころのなかに
ぽっかりちゃんが やってきました
おともだちとけんかして なんだかかなしい
だれにも いえなくて もやもやする
「こんにちは…」
ぽっかりちゃんは だまって そばにすわります
なにもいわないけど
いっしょにいるだけで ちょっと らくになる
だれかが 「だいじょうぶ?」っていってくれたとき
ぽっかりちゃんは にっこり わらって
そらにのぼっていきました
ぽっかりちゃんは また
だれかのこころのすみっこで
そっと やすんでいるのです
【「ぽっかり」と名づけたもの】エッセイ
ときどき、心に「ぽっかり」と穴があくことがある。
失恋をしたとき、大切な人を失ったとき。
期待していた言葉が届かなかったとき。
誰にも責められていないのに、自分を責めてしまうとき。
その穴は、見えないのに、たしかにある。
風が吹きぬけるような感覚。
ふだん気づかずにいた何かが、急に姿を消したような、ぽっかり。
それは空虚。
だけど、空虚は悪者じゃない。
それは「心の余白」だ。
大切なものを大切だと気づくために、心が用意したスペースかもしれない。
満たされていないことに気づくことで
初めて、本当に必要なものが見えてくる。
ぽっかりの中には、やさしさが流れこんでくる余地がある。
誰かの言葉、あたたかいまなざし、ゆるす気持ち。
そして、自分自身をいたわる時間。
子どもが泣き止むのを待つように
ぽっかりも、そっとしておいていい。
埋めようとしなくても、やがて
何かが流れこみ、ふわりと満たされる瞬間がやってくるから。
だから、ぽっかりしてしまった自分を
どうか責めないで。
それはあなたが、ちゃんと「生きている」証だから。