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タカーシャ
タカーシャ
novelistID. 70952
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童話:マグ郎とカメ太

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童話:マグ郎とカメ太

むかしむかし、
広い海の中に、「マグ郎」と「カメ太」というふたりがいました。

マグ郎は、とっても速いマグロ。
びゅーん!と、いつもすごいスピードで泳いでいます。
「ぼくは世界でいちばん速いんだ!どこへでも行けるんだぞ!」
でもあまりに速すぎて、まわりのことはなーんにも見えません。

いっぽうカメ太は、とってもゆっくりなカメ。
のんびり、ふわふわ、時には寝ながら泳いでいます。
「ぼくは この場所がすきなんだ。ここにいると、いろんなものが見えるから」
でも、どこへも遠くへは行けません。

ふたりは、まるで正反対。

だから、どちらも思っていました。
「アイツのこと、なんかきらいだ!」

だけど、ある日。
マグ郎が、あまりに速く泳ぎすぎて、まるで知らない場所まで来てしまいました。
「……ここ、どこだ?」

そんなとき、ゆっくりのカメ太がやってきました。
「やあ、はじめまして。ここ、はじめて?」

マグ郎は少しイライラしながら言いました。
「きみは、いつもそんなにノロノロしてて、つまらなくないの?」
カメ太はにっこり笑って言いました。
「だって、ほら見てごらん。あのサンゴの赤、きれいでしょ? この石の形も面白いよ」

マグ郎ははっとしました。
「……そんなの、知らなかった」

マグ郎は考えました。
「ぼくは、どこへでも行けるのに、何も見てこなかったのかもしれない」
カメ太も思いました。
「ぼくは、いろいろ見てるけど、どこにも行けなかったなぁ」

その日から、ふたりはいっしょに泳ぐことにしました。

マグ郎は少しスピードを落として、カメ太の見る世界を知りました。
カメ太はマグ郎に乗せてもらって、知らない場所へ連れていってもらいました。

正反対だったふたりが、
ゆっくりと──でもたしかに、友だちになったのです。

そしてふたりは知ったのです。
きらいって、ほんとうは「ちがい」におどろいていただけ。
ちがいは、ともだちになるチャンスかもしれないって。

マグ郎とカメ太がいっしょに泳ぐその海は、
まるで、世界が少しだけ広くなったように見えました。

おしまい。