「取引の影――日本橋ビジネス戦記」
【導入】
東京・日本橋。老舗の専門商社「東成トレーディング」で営業部門を束ねる男、朝倉浩一(50歳)は、ある日、中国の日本法人「新華グローバル」との取引話を耳にする。
だが、その企業については、常務取締役・金森から明確な指示が出ていた。
「あそこは絶対に取引するな。信用できん」
しかし、朝倉は情報を独自に集め、「現地法人の経営は堅実で、むしろこの機会を逃せば他社に取られる」と判断。裏で密に交渉を始める。
【展開】
交渉は成功し、数ヶ月で億単位の売上を記録。社内でも評価は急上昇し、金森常務も黙認せざるを得ない状況となる。
ところがある日、ネットニュースが会社を揺るがす。
「新華グローバル中国本社 社長、脱税容疑で逮捕」
一気に社内はパニックに。金森は勝ち誇ったように言う。
「だから言っただろ。今すぐ取引をやめろ。責任は君が取れ」
朝倉は即座に中国側と連絡を取り、緊急会議を要請。数日後、彼は驚くべきスピードで以下を実行する:
• 日本法人の社名変更と役員の再編
• 新会社との再契約書の作成
• 資金流通経路の見直しと法務確認の徹底
• 社内のリスク管理部門との調整
その迅速な対応により、取引は継続され、ダメージを最小限に抑える。
【クライマックス】
だが、社内では朝倉の立場が揺らぎ始める。「自己判断で密に動いた」という非難、金森からの冷遇。まるで社内にも見えない敵がいるかのようだった。
朝倉は悩み抜いた末、ある一言をつぶやく。
「俺は会社のために、勝負したんだよ…」
裏切りと信頼の間で揺れながらも、彼は「結果」を出し続けることに集中する。
【結末】
数年後、社内で大規模な人事異動があり、金森は取締役から外れる。
そして朝倉は、新たに創設された海外戦略本部の本部長に就任。
かつて「絶対に取引するな」と言われた中国企業との提携は、今やグループ全体の屋台骨に。
彼の心には、いつもあの言葉があった。
「最後は、貫いたものが勝つんだ」
作品名:「取引の影――日本橋ビジネス戦記」 作家名:タカーシャ