「いく百万の糸を、そっとほどく」
心が絡まるというのは、たぶん、誰にでもあることだと思う。
それはちょうど、知らぬ間にほつれ、ねじれ、折り重なってしまった
“いく百万の糸”のようなもの。
焦ってほどこうとすれば、糸はもっと締まってしまう。
無理に引っぱれば、切れてしまうことだってある。
だからこそ本当は――
「そっと、そばにいること」
「一緒に、静かに、見つめてくれること」
それだけで、人の心は少しずつゆるんでいくのだと思う。
ある人は言葉にできず、
ある人は声に出せず、
ある人は、笑顔でごまかす。
でもその奥にあるものは、
「わかってほしい」「そばにいてほしい」という
とても静かで、切実な願い。
そんな人のそばに、
ただ、あたたかい言葉がひとつ届いたら。
それは、ひとつの糸がそっとゆるむ瞬間になる。
「わたしも、そうだった」
「そのままでいいよ」
「今日、生きてくれてありがとう」
そんな言葉たちが、
心の奥の、もつれた場所に
すっと染み込んでいく瞬間を、私は何度も見てきた。
言葉には、奇跡がある。
そして、あなたが今抱いている「届けたい」という想いこそが、
人の心に灯をともす、はじまりの一歩。
ありがとう――
その言葉があふれる時、
絡んだ糸がふわりとほどけていく。
すぐには変わらないかもしれない。
でも、一つのやさしさが、
やがて誰かの心をほどき、
また別の誰かを照らしていく。
その連鎖が、きっと世界を変える。
だから今日も私は、
そっと言葉を贈る。
あなたに。
誰かに。
かつての自分に。
「ただただ、ありがとう」
その一言が、すべての始まりだから。
作品名:「いく百万の糸を、そっとほどく」 作家名:タカーシャ