宇宙のたびびと
-ちいさな ひとの おはなし-
むかしむかし、
まだ「なぜ?」がたくさん空に浮かんでいたころ。
ある星の上に、ちいさな ひとりの子どもがいました。
名前は ルカ。
いつも空を見上げて、不思議そうにたずねるのです。
「どうして ぼくは ここにいるの?」
「この空の むこうには なにがあるの?」
ある夜のこと。
ルカが眠りにつくと、ふしぎな風が窓から入ってきて、
やさしくルカの手を引きました。
「さあ、出発の時間だよ」
風がそう言うと、ルカの体はふわりと浮かびました。
気がつくと、ルカは空の上にいました。
まるで宇宙をわたる舟に乗ったように。
まわりには、
そよそよと流れる気圧のリボン。
ふわふわの空気の妖精。
ぽかぽか光る太陽のおじいさん。
にっこり笑うお月さまのお姉さん。
「ぼく、どうして生きてるの?」
ルカが聞くと、太陽はこう言いました。
「それはね、たくさんの奇跡が ちょうどよく 重なって、
君が ここに 生まれたからさ」
月のお姉さんが そっとつけ足しました。
「あなたは宇宙の一部。
だから、あなたも奇跡の ひとかけらなのよ」
ルカは地球を見ました。
青くて丸くて、静かに回っていました。
それをくるんと回しているのは、
目に見えない力。
ひっぱるちから――引力。
星たちは手をつなぎながら、ルカにささやきました。
「あなたは、宇宙のたびびと。
いまも、ずっと、旅をつづけているのよ」
その夜、ルカはひとつの答えを見つけました。
「ぼくは、宇宙といっしょに 生きてる」
そう思ったら、心がぽかぽかして、
気づけばベッドの中で、ルカはにっこり眠っていました。
それからも、ルカは空を見上げます。
知っているからです。
自分が この広い宇宙の、
ちいさな ちいさな
たびびと だということを。
The End