サボテンと檸檬
恋心
健ちゃんへの恋心に気付いたのは中学三年生の夏休みだった。
当時、クラスで仲の良かった友達と行く予定で計画を立てていた地元の花火大会に、健ちゃんから誘われたのだ。
「どうして私?男の子の友達と行きなよ。」
「実里と行きたいんだ。」
顔が火照るのは夏の暑さのせいだけではないと胸の高鳴りで気付いた。
結局、花火大会は雨で中止になってしまったがそのせいか毎年夏が来るたびに雨の匂いがあの日の光景とリンクしてしまい色濃く脳裏に映し出される。
もし、あの時一緒に花火を見に行っていたら…
「未来は変わっていたかもしれないね。」
居心地の悪そうにしているサボテンにそっと触れ、
夕飯の支度をする母の手伝いをするために私はリビングへと向かった。