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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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氷室(続・おしゃべりさんのひとり言186)

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氷室



雪山ってイメージは、冬だけのものじゃないですか?
でも僕は趣味として登山を始めてから、高い山では夏頃でも見れるんだと知りました。
真冬には大雪で通行禁止の山道でも、5月くらいになると、何メートルも高さがある雪の壁の隙間みたいな道路を、観光バスで通行出来るようになったりしますものね。
皆さんにとって、雪って何月くらいまで残ってるイメージですか?

子供の頃、(夏に雪が降ったら涼しくていいのに)って思ってたんだよ。
かき氷も雪で作れるし。きっと楽しいだろうな。
全世界のクーラーを、(同時に全開で点けたら可能になるんじゃないか)って想像してたり。
そんな猿並みの知能だった頃の冬、向かいの家に1歳年上の女の子がいて、その子と雪遊びしたのを憶えています。
その日までに父さんの田舎で何回か大きな雪だるまを作ったことがあったので、僕がその子に教えながら作ったんだった。
でもそんなに雪が降る地域じゃなかったから、その時もせいぜい5センチ積もったくらいじゃなかったかな?
15センチくらいの小さな雪だるまだったと思うけど、小枝を腕代わりに差して、顔には小石で目と鼻と口を作りました。
するとその女の子が、その雪だるまを冷凍庫で保管しようと言い出したんです。
そのお家はソーセージの販売をされていたので、2メートルくらいの冷凍庫が車庫にありました。
「夏に雪合戦しよう!」
他にも雪玉をたくさんその冷凍庫に入れたんです。

今年の冬は寒かったです。
最強寒波。しかも長期間。
雪もたくさん降りました。
交通がマヒするほどじゃなかったけど、出勤時にはかなり苦労しましたね。
なんせ、ガレージの車を掘り起こすために、5時に起きて、約1時間雪かきの毎日でした。
6時半に家を出るのは、交通渋滞を予測してのことです。
会社に着いてからも、駐車場の雪かきが待ってます。
毎朝二回の重労働・・・?
実はそうでもないんです。今年は寒すぎて、朝のうちはまだパウダースノ―でとても軽かったんです。
この地に住んで20年になるけど、こんなこと初めて。関西じゃ珍しいと思う。
例年の雪は湿っていて、スコップで持ち上げるととても重いんですけど、今年は楽でいいわ。さらさら~でした。
ご近所さんもまだ暗いうちから、力を合わせて表通りまで雪をかいてくれます。毎朝です。一旦昼になると融けだして、夜中に再び凍ると固くて重たくなってしまうから、翌日にまで残しておきたくないんです。
はじめの内はたっぷり時間がかかりましたけど、何日も雪が続くと皆慣れるのか、面倒な作業もすんなり済むもんです。
そして何日目かには、案外交通渋滞も無くなります。
その代わり街中に増えるのが、除雪機で雪かきされた残雪が、道路わきに所どころ山となって積み上げられてるやつ。
パチンコやスーパーの駐車場には、3メートルくらい積んであって、ちょっとした小山です。子供たちが雪山登山して遊んでいます。
この雪はいつまで残ってるんでしょうか?
先週は暖かい日が続いたんで、意外に早く融けてきましたけど、例年通りなら、2~3週間は残っていますが、寒い日が続くと1か月残ることもあるんです。
雪の降らない地域の方には、イメージしにくいことかもしれませんが、積み上げた雪の山は本当に溶けるのが遅いんだ。

実際冷蔵庫がない時代にも、こんな冬の雪や氷を保存する技術がありましたよね。
冬の間に切り出した氷を、たくさん集めて、藁のムシロで包み、涼しい山の小屋や洞窟に保存しておく方法です。
こういう施設を『氷室(ひむろ)』と言います。
氷室と言えば、(ミュージシャンじゃなく)僕は飛騨高山の酒蔵の純米大吟醸『氷室』を思い出します。
日本酒が苦手な僕でも、この酒なら美味しく飲めるんです。
しかも常温保存できない、要冷蔵の生酒って言うところが、まさしく氷室っぽいでしょ。それは余談ですが。
お侍さんの時代でも氷室の設備のおかげで、京の都やお江戸の身分の高い人々は、夏でも氷が食べられたそうですから、本当に夏まで保存できてたんですね。
素朴な話に聞こえますけど、とても贅沢なことです。

現代、地球温暖化の雪不足のため、近くのスキー場は毎年休業状態だったりします。
まとまって降った時だけ営業されるんですが、急に積もって開業準備が間に合わないなんてこともあります。
だから人工雪を撒いて営業をしている施設もありますね。でもコースの外は全く積もってないので、臨場感がないというか、情緒がないというか。残念。
上質の雪を保存する方法があれば良かったのに。

そんなことを考えていると、ふと冒頭の子供時代のことを思い出しました。
あんなふうに夏まで雪を保存しておくアイデア、子供にしてはとても面白いと思いませんか?
でも、夏に雪合戦した記憶がありません。すっかり忘れちゃってたのかもしれませんね。


     つづく