東京メサイア【初稿】
#20.東京マラソン
東京郊外の墓地(早春)
花が供えられた桜井家の墓
墓前に透明ケースを置くカンタロー
透明ケースの中には真鍮製のひまわり
空を見あげたひまわりの花が墓石のほうを向いている
水桶と柄杓を持って墓地の細い道を下るカンタロー
青空の下遥か遠くに東京都心の摩天楼が淡く見える
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
東京マラソン
多数のマラソンランナーが車道を走る
先導する陸連ランナーに囲まれて腕を振って走る江藤
沿道にたくさんの一般市民が集まる
知事頑張って!声がかかる
沿道で和田が両手を振って声援を送っている
和田の隣にいる加恵も拳を握る
和田と加恵の声援に苦笑いで応える江藤
5キロの給水地点で待ち構える八村
八村からスペシャルドリンクを受け取る江藤
江藤 「八村、あと何キロ?」
八村 「あと37キロです」
江藤 「ええぇ、無理ぃ」
八村 「頑張ってください」
江藤を追って走る織場と招堤
織場 「いつまで知事の護衛を続けるんだ、俺たち?」
招堤 「知事が走り終えるまででしょ。きっついなぁ」
織場 「しかしなんで俺たちが選ばれたのかなあ。俺は今年50歳だぞ」
招堤 「胸に手をあててください」
織場 「(胸に手をあてて)こうか?」
沿道で伊達家4人家族が小旗を振って江藤の走りを応援する
エミリ「エトサヤ、かんばれぇ」
笑顔になる江藤
村定と愛子が沿道の観衆に混じってマラソンを見物する
陳情に来た町会や婦人会の集団が沿道に見える
少し外れて北風が2名の仲間を連れて立っている
無精ひげを剃り散髪して別人と見紛う身なりの北風
年寄りと小太りの仲間も身なりは整っている
真緒 「ママ、がんばって」
人垣を分けて観衆の中から真緒が江藤に声援を送る
江藤が真緒を見つける間もなく人垣に消える真緒
江藤 「真緒」
足踏みして真緒を探す江藤
人垣の向こう側で真緒が背中を向けた男性にすり寄る
男性の背中にはバックスキンのギターケース
ソフト帽の下から明るい栗色の髪がなびく
男性の腕にしがみついてはしゃぐ真緒
男性と連れだって遠ざかる真緒をジャンプして呼びとめる江藤
真緒 「真緒、ちょっと真緒!」
END
作品名:東京メサイア【初稿】 作家名:JAY-TA