東京メサイア【初稿】
#19.SNS拡散
警視庁地下駐車場(11:58)
基盤の入ったコンテナボックスを輸送車に積みこむ作業員たち
アルファードと輸送車の周囲に集まり水分補給する作業員たち
輸送車と離れてひとり別の車に向かう作業服姿の相良
ショルダーバッグが他の作業員たちから見えないように抱える相良
駐車場に続く通路を駆ける桐山と駒木
通路に面したトイレの中から板壁を叩く音
トイレの前で立ち止まる駒木
先を急ぐ桐山
トイレの個室を順に調べる駒木
下着姿の男性が頭から麻袋を被せられて転がっているのを発見する駒木
男性は両手両足を粘着テープで縛られ便器に繋がれている
郡司が遅れてやってくる
駒木 「(郡司に)彼を頼む」
桐山の後を追って開いたドアから地下駐車場に出る駒木
黒のマークXが動きだす
桐山 「待て!」
桐山がマークXの後を追うが追いつかない
駐車場出入口のシャッターが上から降りて閉まり始める
車の屋根ギリギリで出入り口を通過するマークX
閉まりきったシャッターで追跡を断たれる桐山
桐山 「駒木さん、緊急手配を」
都内街角(12:01)
外出自粛解除の文字とともに江藤の顔が街頭ビジョンに溢れる
幹線道路を警察車両が絶え間なく走る
白バイ警官らが外出自粛解除を広報して回っている
街角に人通りや一般車両の通行量が徐々に増える
ビジョンやスマホで解除を知った人々が安堵の表情を浮かべる
× × × × ×
都内幹線道路を走行するビースト
運転する八村と助手席に江藤
後部エリアのベンチシートで膝を立てて車窓を眺めるエミリとカズマ
低速で広報して走る都の広報車
一台の白バイが先導している
広報のアナウンスが街に響く
『ご家族は皆さん揃われていますか。おうちの中で具合が悪くなった方はいらっしゃいませんか。只今電話が集中して繋がりにくくなっています。ご用件がある方は巡回している東京都の広報車、警察のパトカー、もしくは近所の派出所に足をお運びください』
伊達家の前にビーストが停まる
スライドドアが開き八村の手を借りてエミリとカズマが降りる
エミリはペンギンキャラのついた水色のバケット帽を被っている
玄関で待ち構える晴美と光雄
待ちきれずに駆けだす晴美に抱きつくエミリとカズマ
妻子に歩み寄り江藤に礼を言う光雄
光雄 「知事自らいらしてくださるとは・・・」
江藤 「いまね、都庁の中しっちゃかめっちゃかだから。来てもらっても、ね」
光雄 「いろいろご迷惑をかけてしまったのではないでしょうか」
江藤 「ううん、全然いい子たちでしたよ。とくにカズマくんはエミリちゃんを男らしく護ってました。褒めてあげてくださいね」
ひとしきり泣き止んだところでエミリとカズマをビーストのほうを向かせる光雄
光雄 「本当にありがとうございました」
光雄 「さあ、お前たちもこのおばさんにお礼を言いなさい」
親の手を借りて頭を下げるエミリとカズマ
警視庁駐車場(12:03)
駒木 「緊急手配を要請するのは現状厳しいです、桐山さん」
桐山 「一刻を争うんだ」
駒木 「態勢が整っていないし容疑者の身元もわからない状況では」
郡司 「桐山さん、車のナンバー憶えていますか」
桐山 「ああ、記憶している。車種も」
駒木 「逃走車の捜索をするにしても、郡司、人員が足りないぞ」
郡司 「ミヤビなら」
警視庁公安室(12:08)
壁を埋め尽くす72台のモニター
ブラックアウトしていたモニターが起動し徐々に画像が現れる
東京都内のすべての監視カメラ映像がモニターに映しだされる
23区内の幹線道路を通行する車両が幾台も映しだされる
ナンバープレートにズームするいくつかの画面
緑色の枠が現れては瞬時に消える
72台のモニターで緑色の枠が点滅を繰り返す
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
国道1号線を、サイレンを鳴らして疾走するセドリック
無線を手にハンドルを握る駒木
駒木 「どうだ、郡司?」
72台のモニターの前で画面を見つめる郡司
ナンバープレートを捉えた緑色の枠が赤色に変わる
郡司 「ヒットしました」
駒木 「どこだ?」
郡司 「溜池山王の交差点。進路は南方面」
駒木 「遠くはない。進路の信号を赤にして逃走を阻んでくれ」
荒い画像でマークXを運転する相良の顔がいくつかのモニターに映しだされる
作業服からスーツに着替える相良
赤信号で停車したタイミングで相良の顔にズームアップする防犯カメラ
相良の顔が赤い枠で切り取られる
デスクトップモニターの相良の過去に手配写真が映しだされる
郡司 「逃走犯の身元が割れました」
都内某所(12:17)
走行するビースト車内
八村 「いいご家族でしたね」
江藤 「あたしたちが送り届けてよかったでしょ」
八村 「いやいや、都庁まで子どもを迎えに来るって言ってたのを・・・」
江藤 「都庁の混乱ぶりを見たら、来ていただくのが気の毒で」
八村 「そこまで混乱してませんでしたけど。混乱してたのはむしろ知事」
江藤 「次から次へと無理難題。パニくるわ」
八村 「和田副知事から早く都庁に戻るよう、メールが入ってます」
江藤 「緊急事態の説明をしろっ!て言われても、何がなんだか」
八村 「もうすぐ定例記者会見のお時間です」
江藤 「でなきゃいけない? いやだなぁ」
八村 「知事の大事な仕事のひとつなんですけどね。マスコミ対応も」
江藤 「すぐ喧嘩になっちゃう」
黙りこんで窓の外を眺める江藤
ビーストの横をスピードをあげて白バイが通り過ぎる
田町付近(12:25)
田町手前の赤信号の交差点で渋滞するマークX
郡司からの無線を聞く駒木
郡司 「相良秀彦、44歳。二度のフィッシング詐欺で実刑。現在仮釈中」
猛スピードのセドリックが赤信号で停滞する交差点に近づく
駒木 「郡司、相良をここで確保する。応援を集めてくれ」
サイドミラーで赤色灯を備えたセドリックが後方に停まっていることに気づく相良
信号で停車したマークXを乗り捨てる相良
黒縁眼鏡でビジネスマンに変装した相良
ノートPCを収めたビジネスバッグを肩に掛け歩道を歩く相良
セドリック車内から相良の動きを追っていた駒木と桐山
車外に飛びだす桐山
JRの駅に通じる方面に道を歩き、角を曲がる相良
駅やオフィスビルから出てくるサラリーマンらに紛れる相良
駅を目前にして相良を見失う桐山
セドリック車内から郡司に無線で状況を送る駒木
公安室の壁面モニターに田町駅周辺の様々な監視カメラ映像が映る
カメラのいくつかが相良の動きを捉える
田町駅の改札内のデジタル掲示板に
『重要参考人 相良秀彦』
相良の名前と顔が表示される
デジタル掲示板が相良の目に留まる
掲示板を見あげる2名の鉄道警察官の姿
改札を諦めて駅から離れる相良
相良の行く手に白バイが停まる
桐山 「逃げられんぞ、相良」
相良の後方で人混みの中から桐山の怒声がする
逃げ場を失った相良
立ち止まって物見するサラリーマンすら刑事に見えてしまう相良
懐から飛び出しナイフを出して周囲を威嚇する相良
キャっと言って身を翻す主婦
後ずさりするサラリーマン
作品名:東京メサイア【初稿】 作家名:JAY-TA