審問官第二章「杳体」
'Here,' said I, 'is your lot, in this space, if space it may be call'd.' Soon we saw the stable and the church, & I took him to the altar and open'd the Bible, and lo! it was a deep pit, into which I descended driving the Angel before me, soon we saw seven houses of brick; one we enter'd; in it were a number of monkeys, baboons, & all of that species, chain'd by the middle, grinning and snatching at one another, but witheld by the shortness of their chains: however, I saw that they sometimes grew numerous, and then the weak were caught by the strong, and with a grinning aspect, first coupled with, & then devour'd, by plucking off first one limb and then another till the body was left a helpless trunk; this after grinning & kissing it with seeming fondness they devour'd too; and here & there I saw one savourily picking the flesh off of his own tail; as the stench terribly annoy'd us both, we went into the mill, & I in my hand brought the skeleton of a body, which in the mill was Aristotle's Analytics.
So the Angel said: 'thy phantasy has imposed upon me, & thou oughtest to be ashamed.'
I answer'd: 'we impose on one another, & it is but lost time to converse with you whose works are only Analytics.'
記憶に残りし幻
一人の天使が吾の処にやって来て言ひし。おお、哀れで莫迦な若者よ! おお、恐ろしき! おお、悲惨なる状態よ! 汝があらゆる永劫へと汝自身を準備せし灼熱の燃え上がれり地下牢に思ひ馳せよ、永劫へと汝はそのやうに行ひし。
吾曰く。多分、汝は吾に吾が永劫なる宿命を見せたいのだそして吾等はそれについて沈思黙考しそして汝の宿命か吾が宿命かのどちらかが最も望ましいかを解からせたいのだ。
かやうに彼は吾とともに馬小屋へ連れて通り過ぎそして教会を通り過ぎそして最後に粉挽き場へと至る教会の地下室へと降りし、そして洞窟へと来し。そのうねうねと曲がりし洞窟を降り、気が滅入る路を手探りで進みし遂には空虚な空の如き無際限な空虚が吾等の下に拡がりしそして吾等は木の根に摑まへられてをり、この無際限に引っかかりてありし、しかし、吾曰く、汝が喜ぶ為れば、吾等はこの空虚に身を委ねてもよろしかり、そしてここでもまた神の摂理が存するかを試すなり。吾の望みを汝は望みしか? しかし彼は答へし。おお、若き人よ、汝が思ひし事はせずこのまま吾等は暗黒が過ぎ去りし刹那に現はれり汝が宿命を見るらむ。
かやうに吾は彼と共に或る樫の木の捻じれし根に坐ってをりし。彼は奈落の底へ頭を向けし茸に宙ぶらりんの状態なり、
徐々に無限なる奈落の底が見えし、燃え上がる都市の煙の如き炎、吾等の下には遙か彼方に太陽があり、暗黒ながらしかし輝きし、太陽の周りには巨大な蜘蛛達が巡りし燃え上がる軌道があり、彼らの獲物の後を這ひつつ、彼らは無限の奈落を飛ぶと言ふより寧ろ泳ぎつ、死体から生まれし最も悍ましき動物の形をし。そして大気はそれに満ちし、そしてそれらで出来てゐるやうに見えし、それらは「悪魔」なり。そして気の「力」と呼ばれし、吾は今、吾の共に吾の永劫の運命どうか? と尋ねし。彼曰く、黒と白の蜘蛛の間
然し今、黒と白の蜘蛛の間から一つの雲が現われりそして炎は燃え上がり下全体の深淵なる漆黒の闇を巡るなり、それ故下の奈落は海の如く黒くなりそして恐ろしき音で轟きし、吾等の下は暗黒の嵐以外何も見えず、雲と波の間の東方を見る迄は、炎と渾然一体となった血の瀑布が、吾等からは多くの石を投げ入れる事もせずに醜悪なる大蛇が現はれてはそして再び鱗を纏ひし途轍もなく巨大で醜悪なる大蛇が沈みし。遂に東方に、三度ほどの距離に、ゆっくりと波の上を燃え立つ波頭が現はれつその波頭は緋色の炎の二つの球体を吾等が見出す迄黄金色の巌のやうに盛り上がりつつ。其処から海は煙の雲の中へと逃げつ、そして今吾等は見し、それはレビヤタン(巨大な海獣)の頭である事を。彼のものの額は虎のそれと同じやうに緑と紫の縞模様に分かれてをり、直ぐ様吾等は血の閃光と共に漆黒の深淵を血の色で染めし憤怒の泡が引っ掛かってゐる口と鰓を見し、吾等の法に向けてあらゆる霊的なる存在の怒りと共に進みし。
吾が友の天使は粉挽き場の彼の持ち場へと上りし、われは一人留まりし、そしてそれから最早何も見えず、しかし、吾はハープの伴奏で歌いしハープ弾きの歌声を聴きつつ月光によって吾が或る川の快適な堤に坐りし様を見出しつ。そして彼の主題は自身の意見を変えぬものは澱んでゐる水の如く、そして心に醜い爬虫類を育てしと。
しかし、吾は立ち上がり、粉挽き場の方を見し、そしてそこで吾は吾が天使を見つけたり、そして天使は私に驚きの質問をせし、吾はどのやうに逃げしか?
吾答へし。吾等が観たすべてのものは、あなたの形而上のお蔭でありし、なぜならあなたが逃げし、吾はハープを聞きながら月光によって吾が堤の上にゐるのが解かりし、しかし、今吾等は永劫の宿命を見し、あなたはあなたの宿命を見しか? 彼は私の申し出に笑ひし、しかし、吾は突然強制的に彼を腕で摑み、夜を通って西へと飛びし、遂に吾等は地上の影から昇華せし、それから吾は彼と共に太陽の中へと真っ直ぐに飛び込み、そして吾は此処で城濾器着物を着し、吾が手にはスウェーデンボルグの著作があり栄光の場から沈みし、そしてあらゆる惑星を通り過ぎ、遂に吾等が土星に来し時、此処で休み、それから空虚へと飛び込みし、土星と恒星の間で。
作品名:審問官第二章「杳体」 作家名:積 緋露雪