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テッカバ

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「自分は唄方(うたかた) 道行(みちゆき)、テッカバの者ですよ!」
 意外な返答だった。
 まさか……こんなただの寝癖坊やがあの「鉄火場」の……?
「疑うんなら刑事さん、自分のポケットの財布を見てください」
 刑事じゃなくて警部なんだが、とぼやきながら椅子に固定された彼の尻ポケットを探って、黒革の財布を取り出し開ける。
 途端に目を見開いて驚く警部。
「まさか……確かにこいつは鉄火場の連中のIDカードだ」
 警部の手元を覗き込むと、白地のカードに「TEKKABA」というゴシック体の文字と、目の前にあるのと同じ顔の写真がついていた。若干目の前にある方はトマトで汚れているが。
「しかもこいつは……」
 警部がカードを裏返すと、そこにあったのはトランプの図柄だった。
 スペードの7。普通のトランプとは微妙にマークや数字のデザインが違うが、剣を象った七つのマークと対角にある数字はどう見てもトランプだ。
「ナンバー持ちか……」
 ナンバー持ちの意味はよく分からなかったけれど、少なくとも信楽さんがものすごく驚いているのはよく分かった。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎