ボクとキミのものがたり
【休日】
目覚めの良い朝は気持ちがいい。
もうリビングには 布団から飛び出してきたにこやかなボクが居る。
リビングのカーテンを一気に開けると差し込んだお陽さまに挨拶をした。
「おっはよう」
仕事の机の上には、一晩大切にお預かった可愛い猫の腕時計が置かれている。さすがに抱きしめては眠らなかったが、キミと夢の中でも会うことができたのは、きっとこれのおかげかな、とボクは思った。
昨日、忘れていった腕時計をキミが取りに来るのを今かと待ち侘びているボクは、久々に上機嫌になっていた。(自分でいうのもなんだなぁ…)
カーテンを替えてキミとの愉しい場所であるようにと願ったボクにはご褒美のようなできごとだ。
それに急ぎの仕事がはいっていない。仕事場の机の引き出しの中で原稿用紙と万年筆はお休みをしている。ずっとは困るけれど、何もない休日になった。
キミは、忙しいだろうか? いつ来るのかな? 相変わらず気ままなキミを待つのは、今日のボクには耐え難い。うん、苦しいよ。嬉しくって愉しくってどきどきが押し寄せて苦しいよ。(はぁ…)キミが メールをしてくれることなど期待してはいけない。そう思うなら ボクがすればいい。なんてメールしようかな?と考えている気持ちが逸る。
ボクは、キッチンへ行き、インスタントコーヒーを淹れた。
「今朝はアイスにしよう」
お、今日はずいぶん決断力があるぞ。自分で感心しているボクは、きっと腑抜けた顔をしているのかもしれない。
『おはよう。いつ来るの? ボクはオフです。PS:早くおいで』
入力して ひとしきりにやついたボクは、やっぱり恥ずかしくなり、文末のPSを消すつもりだった。だけど、こういうときにありがちな ポチッ あ! やっぱりそのまま送信してしまったのだった。(まいったな……ま、いっかぁ)
キミが、どんな顔でボクを見るのかと わずかに楽しくもあった。
玄関の鍵が開いたような気がした。だけど、待っていても誰も入ってくる様子はない。
ボクは、玄関へと見に出ようとした時だった。ボクの携帯電話が鳴った。
それは、キミからのメールを知らせる着信音だ。ボクは片手で確認する為にキーを押しながら玄関へと向かった。ノブに手を掛けたとき、メール文が表示された。
『今来たにゃん』
ボクは、「それなら、早くはいっておいで」と笑いながらノブを回し、扉を開けた。
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶