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ボクとキミのものがたり

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キミの指先で揺らされるカーテンを ボクも一応見てみながら進むとキミが立ち止まった。
広がった空間には、じゅうたんが並んでいた。
「カーテンは、此処までね。どれにした?」
「え?」
ボクは、キミが選んでくれるものだとばかり思っていたので苦笑した。でも、そんなことは言えない。キミの期待に答えなくてはとカーテンのほうを振り返る。
「うーん、そうだなぁ…… あの辺りの…… いや一緒に見つけたい」
キミの期待がいっぱい溢れる瞳が ボクを見上げる。擬音が見えるなら『キラァーン』とか星マークが散りばめられそうだ。
あのね、とボクの服の端を摘んで、またカーテンのコーナーに入り込んでいった。
立ち止まったカーテンの前で、ボクはキミの顔色を覗った。
「いやあ、可愛いね。あの部屋に似合うかなぁ」
メルヘン全開とでもいうか、レースふりふりの部屋ならば より引き立つかもしれない。だけどボクの部屋じゃあなぁ…… きっと良さが出せないと思うようなカーテンだった。
あ、それともこちらだろうか。ファンシーなキャラクターのカーテンも隣に掛かっていた。
キミは、ボクの視線の先を追ってみる。 
点、点、点…… 
まじまじとボクの顔を見るキミ。
「たぶん、見ているのは違うと思うにゃん。それとも これがいいの?」

ボクの勘違いだった。
キミの見つけたカーテンは、ボクの思考を邪魔しない。ボクもすぐに気に入った。
優しい色合いと季節が変わっても不似合いでない柄は、きっとボクとキミの空間を穏やかに作ってくれるだろう。
(少し大人しいかな)
選ぶものに キミが大人になっていくのを感じて、嬉しいような 寂しいような気持ちもなくはない。
キミは、バッグから携帯電話を取り出すと、何かを見始めた。
えっと… キミがカーテンの棚から探しているのは、部屋の窓に合う大きさのサイズのものだった。そういえば、ボクも何となく覚えているだけだ。何となく頼もしいな。
店主は、ボクたちのことを覚えていたらしく、少しばかり値引いてくれた。
少々大きめの袋をぶら提げて 部屋への帰り道を並んで歩く。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶