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ボクとキミのものがたり

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「こいつじゃなくて このミニひまわりが小夏っていう名前らしいよ。鉢植えでも育つらしいけど、畑に植えてあるから すくすくたくさん咲いたんだって」
「美味しいかなぁ。にゃんてね」
何を言い出すかと思えば……でもそんなキミは、ひまわりのように明るくて凛としている。
「あ、でも花瓶がないんだ」
キミは、部屋を見回すと、キッチンの方へと入っていった。
コップにでも挿してくれるのだろう。ボクはキミに任せて、原稿にキリをつけ、袋にしまい込んだ。
じゃぁーんと言ってキミは、十センチ程の花が咲いた数本のひまわりを活けた入れ物を持って現れたが、花で顔が隠れている。
(どんな表情をしてるんだい?)
見えなくても何となくわかる気がする。でもやっぱり見たい。
「あ、それ?」
えへへと得意気な顔を見せたキミの手にある入れ物にボクは、ちょっぴりキミを見直した。
先日買ったオレンジジュースの紙パック。その上の端を鋏で曲線に切り込んでひまわりが挿してあった。
「ねえ、それカラだったっけ?」
「にゃん? ご馳走さま」
そっか。少し残ってたジュースは、キミの腹の中へと消えたんだね。
キミのお気に入りの卓袱台の上に置いた。
まっ白な卓袱台にオレンジ掛かった黄色と緑色が綺麗に映える。
キミはその前に座り、花弁を指先で揺らしたり、香りを嗅いだり 自分の用事など忘れてしまっているようだ。
今日は何? そんな質問をするなんて今はやめておこう。
キミのその笑顔を暫く見ているのも悪くない。

「ねえ」
「ん、何?」
「一本貰って帰ってもいい?」
「いいよ」
微笑んだキミの瞳にもひまわりが映っている。
「今度 背丈より大きなひまわり畑に行ってみようか」
「ほんと? うん約束ね」
夏の陽射しの中で、キミとひまわり畑でかくれんぼでもしてみようかな。

なんてことを思いながら、暖かな陽射しを背中に感じているボクが居る。
夏の訪れを感じるだけじゃなく、活き活きとした気分にしてくれるひまわりの花。
ただそれだけなのに……。


     ― Ω ―


作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶