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ボクとキミのものがたり

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キミが、傍で心から笑っている。
いつしか魔法が解けて にゃおと猫に戻ってしまったキミは、またボクを楽しませてくれるだろう。
魔法で変身したさっきのキミも、ボクはすぐに好きになってしまったけど、また変身できるのかな。できるよねってキミは、普通の女の子なのに ずぶ濡れの野良猫だったり、天使だったり、今度は淑女ですか。まったく可笑しな女の子だね。
ボクもキミの魔法に掛けられてみようかなと思った。

「あのね」
今度は、何を言い始めるのだろう。緩んだボクの気持ちが引き締まった。
「お母様ね、お父様と仲直りできたみたい。やっぱりお父様が優しいって、お父様と一緒に暮してた。今度のお仕事も ふたりで決めたらしいの」
そう語るキミは、仄かに頬を染め、俯いた。
「良かったね」
キミが「ねぇ…」と発すると 今度は何をと身構えるボクは、心臓がくたびれそうだ。
「携帯電話鳴らなかったよ。これ壊れているみたい」
この一ヶ月半ほどの間、ボクだってキミからの電話を待っていた。
「これもかなぁ」とボクは、携帯電話をかけてみた。
キミの手にある携帯電話が鳴った。ボクが初めて聞く着信音とそのメロディだ。
「はい、もしもし」目の前で電話に出ているキミにボクは話しかけた。
「ずっとどうしていたの?」
「暫く、口がきいて貰えなかったけど、お母様が間に入ってくれて、お父様とお話ができて、それからは、いろんな手続きとかで、ずっと過ぎてしまったの」
「そう」
「もっと家に居なさいって言われたけど、あ、飛び出して来たわけじゃないよ、わかってもらえるように頑張ってみた」
「大変だったんだね。……淋しかった?」

「そんなこと 聞いちゃ駄目だよ」
胸元と耳元からと二重に聞こえるキミの声に抱きしめることもできず、温もりを感じながらボクは、携帯電話を握りしめた。
片手でキミの髪を撫でるように触れるとふんわりとコンディショナーの香りが鼻をくすぐった。
ただそれだけなのに……。

瞳が潤んでくるなんてさ……


     ― Ω ―


作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶