小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ボクとキミのものがたり

INDEX|160ページ/177ページ|

次のページ前のページ
 


ボクだって、簡単な料理くらいはする。
まあ、ひとり暮らしを始めて覚えた程度だけど、朝食くらいはお手のものだ。
キミに 朝食を作ったことがあったね。
ラズベリーのベーグルとサラダとヨーグルトにオレンジジュース。そして、黄身が半熟のゆで卵。
その時のキミの笑顔が忘れられなくて ときどき作ってあげるけど、キミのリクエストはなんとなくこれだね。もちろん、目玉焼きもスクランブルエッグも喜んでくれたけど、「何がいい?」と訊くと、「にゃん」と答える。
「はいはい、ゆで卵ね」
ボクには わかる。可笑しいだろ?

いつだったか、珍しくキミがメールをくれたね。
料理なんてしっかりした先生の元で習っているキミが訊いてきたんだ。
『ゆで卵 作るのにゃん』
いつもよりは、字数が多いから驚いた。ボクは、すぐに返信したよね。
『四分煮て十分ほっとく』
『煮るの? ゆでたまご』
『ごめんごめん。茹でるんだよ』
『にゃん』

そして、しばらくして届いた画像添付のメールにボクは、笑いながら呆れた。
『ぷんぷんにゃん!十分置いたら かちこちん』
どうやら、ボクが『十分』と書いたことが『じゅうぶん』と読んだらしい。
まったく可愛いでしょ? こういうところがボクの思考に癖になってくるんだ。
教えた相手がキミだったことに ボクとしたことが……、不親切だった。
一応謝っておこう。
『ごめんね。生卵を常温に…… 常温はね、買ってきた状態ならそのままだよ。水から入れて 沸騰して四分間。火を止めて十分間。一気に冷やして出来上がり。作ってみて』
『了解にゃん』
そのあと、ボクは、仕事に思考が回らず、キミからのメールが届くのを待っていた。
長かったなぁ……。
やっと届いたメールには、美味しそうにできたゆで卵の画像が添えられていた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶