ボクとキミのものがたり
だが、キミが帰った後からこの状態のボクなのだ。
さてと、本気にならなきゃ申し訳ない。ボクは机に向かった。お気に入りの万年筆もボクの気持ちのままに 思考を邪魔することなく走ってくれた。
気付けば、暖かな陽射しは白い雲を輝かせて移っていた。
目をしばたき、原稿用紙の端を机で揃え、封筒にしまい込んだ。
書き終えたぁー。
椅子の背に凭れ、腕を持ち上げると頭の中に残っている文字が消えていた。全部書けたという満足感が肩から手の先まで突き抜けていった。
あ。
玄関の鍵が開いた気がした。ドアが確かに開いた。
ひんやりとした空気が床を走ってきた。
また暖かさが部屋に戻ってくる。
ボクに向かって一歩一歩。足音を忍ばせて… 早く来い。
冷えた頬をボクが暖めてあげたくて仕方がない。
ただそれだけなのに……。
その時間が待ち遠しい。
― Ω ―
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶