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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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間違い電話(続・おしゃべりさんのひとり言167)

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間違い電話



「その店の電話番号教えてくれる?」と、受話器を手に友人が言った。
「ああ、イチイチゼロの・・・」←これ冗談ですよ。この番号は110番。
僕がそう言い始めると、彼は聞いたそのままプッシュダイヤルを押した。すると、
「こちら緊急通報ダイヤルです。事故ですか? 事件ですか?」
慌てて切っても、警察から折り返し確認電話がかかってきて大変でした。(汗。スミマセン)

最近自宅で、固定電話って使ってる?
僕の家ではほとんど使わないですね。
かかってきても無視しちゃう。←それはアカンやろ。
スマホを持つのが当たり前の時代で、ガラケーも仕事で使ってるって人は多いと思うけど、会社に固定電話はあれど、自宅にはないってご家庭も多くなってきました。
昔から家に設置してたからそのままなだけで、引っ越しの際に市外に出ちゃうと、新たに固定電話の権利を契約しないといけないでしょ。
これ面倒じゃん。
以前僕は、固定電話の権利をNTTさんから買いました。当時は1回線が10万円くらいしたと思う。
高いですけど不要になれば、また買い取ってもらえるから、NTTも公社だった時代から、「電話の権利は資産になる」って謳ってたよね。
だから2回線、3回線持ってる人もいたよ。売る時に価値が上がってるかもしれないって考えてたんだろう。
でも携帯電話が普及しだして、固定電話の利用価値が下がってきたら、NTTは「固定電話の権利は買い戻しません」宣言した。
(なんで? 詐欺だろ!)って思ったけど、資産と捉えてたんなら価値が下がるリスクも覚悟しとかないといけなかったから仕方ない。
だからもう固定電話なんか契約しない家も増えて、いろんな書類に記載する電話番号も携帯番号でOKな時代になったよね。
とにかくスマホがあれば、いつ何時どこに居たって連絡が付くし、電話番号もいちいち調べなくてもいい。全部メモリーしてるもの。だから間違い電話なんてあり得ないよ。
うちの家の固定電話にかかってくるのは、ほとんどセールスの迷惑電話ばかりになってる。
たまに親戚や知り合いがかけてくるけど、僕が出ないから携帯にかけ直してくるし問題ない。
二十歳前の娘は、一度もうちの固定電話を使ったことがないくらいだ。

そういや、青春時代に交際相手の家に電話するの、リビングに家族がいない時間帯しかなかったよな。
大学の時には、自分の部屋に子機を設置したけど、親機でも通話音声が聞かれちゃうから、スリルがあった。
たまに間違い電話もかかってきてたよね。全然知らない人と話す場合、相手の態度がいいと、こっちも丁寧に「いいですよ~」とか親切心が出てしまう。
反対に謝りもせずにブチッて切られると、こっちもブチッ!て、腹が立ったもんです。
ま、僕もたまに間違ってかけてましたから、丁寧に謝ろうって思ってました。
でも当時付き合ってた彼女が、「いたずら電話がかかってくる」って言って悩んでた。
携帯やスマホと違って、固定電話に相手の電話番号が表示されなかった時代だから、そういう迷惑電話ってのも横行してたよな。嫌がらせか、エロい言葉を投げかけてくるような。
そのうち相手の電話番号が表示される固定電話も増えて、そういった迷惑電話はなくなっていったのかな。
そんなことを思い出してると、僕が海外からかけた一本の間違い電話のことを思い出しました。
当時20代で海外出張に行き始めて、まだ慣れてないくらいの頃でした。
国際電話ってかけるの難しいんです。
今だったらLINEの無料通話で簡単ですけど、当時の携帯電話じゃ、そんなサービスなかったからね。
ホテルの部屋からかけると料金がバカ高いんですけど、それでも妻と話したくて何回もかけてました。
かけ方は、まずホテル指定の外線番号を押す。『9』とか『0』とか。
そのあと国際電話をかけるという意味の識別番号を押す。アメリカでは『011』でした。(携帯からかける場合は『+』。『+』ボタンがない場合、『0』を長押しする)
そのあとかけたい先の国番号(日本だと『81』)を押す。
その次が勘違いしがち、相手の電話番号を押すだけですけど、なぜか最初の『0』は省く。(携帯でも固定電話の市外局番でも、最初は必ず『0』で始まるんだね)
それでやっとかかる。ホテルだと、相手が出なくても通話料金が発生してたみたい。

「もしもし、博之です。知子いますか?」
妻が実家に帰ってるの知ってたんで、そっちにかけたので、お義母さんが出たと思ったんです。
「ああヒロさん。はいはい、トモコね。ちょっと待って、代わります」
そう言って、「トモ~! ヒロさんから~」と叫んでる声が聞こえてた。
暫くして、「もしもし。どうしたの?」
(あれ? 声が少し変)僕はそう思いました。(でもこれ国際電話だし、音質があまりよくないのかな?)
「コーチのバッグが安いんだけど、欲しい?」
「え? そんなん買ってくれるの?」
「トートなら2~3万くらいである」
「へえ~、どんなのがある?」
「説明しにくいけど、派手じゃないのは安いから」
「黒っぽいのがあったら」
「多分ある」
「ありがとう」
「他にも安い財布とかあったら買っとくわ」
「そんなたくさんいいわ。それより雨降ってない?」
「雨なんか降らんよ」
「外暗くなってきたわ」
「ああ、今こっち夜の10時頃、そっちは?」
「夜ってどういうこと?」
「ホテル帰ってきて、ピラフ作って食べて、今になった」
「え? どこの話してるの?」
「アリゾナ」
「・・・・・・」
「どうしたん?」
「失礼ですが、どちらさんですか?」
「知子ちゃうの?」
「うちは田中ですけど・・・」
「え?」
「間違い電話ですか?」
「えええ~!?」
ブチ! と切られました。
こんな通話内容だったんですww 案外気付かないもんですね。
偶然、僕と妻の名前が、間違ってかけた先の奥さんと旦那さんと同じだったらしく、相手は怖かったのか、コーチのカバンがぬか喜びだったので恥ずかしかったのか、いたずらだと思われて怒ったのか。それは分かりません。
それにしても、面白い偶然だし、お詫びにコーチのキーホルダーくらい送ってあげてもよかったし、もう少し言葉を交わしたかったのに、まあ、電話料金も高くつくので無駄なことですしね。
それで僕の妻には、ド派手なトートと同じデザインの財布をセットで買って帰りました。

後年、このエピソードをヒントに、『池の中の狂気』(サスペンス小説)を書いて投稿したんです。


     つづく