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田 ゆう(松本久司)
田 ゆう(松本久司)
novelistID. 51015
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いちじく賛歌

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いちじく讃歌

1) さてタイトルを少し変えて、いちじくの栽培を通して人間や世の中を見ていくことにしたいと思う。タイトルをいちじく「讃歌」としたがいちじく「惨禍」になりそうな気配も感じられないわけではないが、無事いちじくを生育させてうまい果実を収穫することが一番の目標である。そのためにはこれまでの考え方を変更せざるを得ないことに気づき始めた。

生き物はすべてそれ自体に強い生命力を持っている。だから手をかけず自然のままで生育させるのが一番だと思い込んでいたが、いくら生命力があっても敵が多ければそれに対抗するのはむずかしい。敵もまた生きるために相手に仕掛けてくるので生命力vs生命力の対決になり、その中でも植物は一番虐められやすいということが分かってきた。

果樹の栽培農家が我が子を育てるごとく手塩にかけて育てている姿はそのことを物語っている。もともと自然まかせがいいんだという私の持論はパーマネントカルチャーや不耕起栽培から学んだ知識であるが、元を正せばできるだけ手抜きでやりたいという根性から出てきたものと言える。しかし、いちじく栽培と現実に向き合ってみればこの放置癖を改めざるを得ないことがようやく分かるようになってきた。
いちじくの木は独特の芳香?を発するのでそれに引き寄せられる害虫や土中から忍び込むカビなど細菌類も多い。それらからいちじくの木を護るにはそれを栽培した人間の助けを必要とする。今年は植栽1年目でその目標はいちじくの木を一文字に仕立てることにあり、成果の方は来年に持ち越されることになる。
いちじく栽培農家も況や栽培組合もない土地でやり始めた以上いちじく惨禍に終わったのでは意味がない。いちじく讃歌を口ずさむことができるよう根気に栽培管理に努めたい心境である。