友の受賞に動揺した
友の受賞に動揺した
少し古い話で恐縮だが、マア聞いて下さい。
平成二十三年三月十一日に東日本大震災があった。
私の病院も私も大きく動揺した。
余震が続き、いつも身体が揺れているような気がしていた。
地震だけかと思ったら、それ以外のことで私は動揺してしまった。
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「友がみな我よりえらく見ゆる日よ 花を買いきて妻としたしむ」
啄木の有名な歌だ。
友が自分より偉く見えるたびに、花を買わなければならないのなら、私は毎日、花屋に行かなければならない。
しかし大地震の翌年、あの男が受賞したことを知った時は、啄木の気持ちがわかるような気がした。
彼は大学病院の研究室で私より後輩だった。
研究室は相撲部屋にも似ていて、ビール瓶で頭を殴ることはないが、一日でも先に研究室に入れば、先輩で偉いのだ。
私は長い間、彼より偉いつもりで、付き合っていた。
ところが人生は何が起こるかわからない。
私がボンヤリしている隙に、彼は私を出し抜いた。
彼の貰った賞は、専門学会の中でビッグなものだった。
関係者は皆一目置く。私は二目も三目もおく。