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Fine World

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「ねぇ、もし明日、人間のほとんどが突然消えちゃったとしたらどうする?」
彼女がこんな事を聞いてくる時の大半は、特に理由も無い、単なる思い付きだ。
気紛れな性格故の、性質の悪い癖。昨日の夜に、似たシチュエーションの映画でも見たのかもしれない。
「ほとんどって、人間が滅びるって訳じゃないって事?」
「滅んだら全員消えたらそれでお終いじゃん?だからほとんど。終わったんじゃなくて、終わっていく世界。一県に残り百人くらいとかさ。」
その基準が何処から来てるのかさっぱりだけど、億が一、そうなった時の事を想定してみる。

いつもの朝の、ほんの少しの異質感。
小鳥と風の音だけが聞こえる。一見穏やかな朝の風景。
そこには絶望も混乱も無い。ただ静かに、末期的に、終焉へと向かう落日の名残の様。

もし、僕がその名残の一員に選ばれたとしたら――――

「旅に、出るんじゃないかな。」
「何で?人が消えた原因でも探しに?」
「まさか、僕にファンタジーの趣味は無いよ。唯、人の世界の終わりってヤツを、できるだけ多く、長く見続けるだけ。」
別に本として記録しようとかいうつもりでもない。それは自己満足のためだけの、意味も大義も、結末すらない観測旅行。
「もしかしたら人が消えた理由も解るかもしれないし、せめて納得くらいは出来るだろ?」
 ふーん?なんて、関心の無い返答をしながら、彼女は閉め切っていたカーテンを開け放つ。窓の外は午前二時の暗闇。流石は田舎といったところか、星以外の明かりは一つも灯っていない。

 まるで、本当に人間の終わりが来たみたいな、星の降る夜空。もし本当に人間が消えるのなら、この星空に押し潰されて消えていくのかもしれない。

「そういえばさ、音楽記号で“終わり”の“Fine”って、英語にすれば“きれい”って意味になるよね?」
 開けた窓枠に腰掛けながら彼女は言った。
 多分、また理由なんて無いんだろう。

窓の外の、終わった“みたいな”世界を覗く。
確かに、この世界は静かで、キレイだ。
作品名:Fine World 作家名:加茂 七瀬