ラン・リターン
――君がぼくの手を握る。
驚いて僕は、ふと右隣を見る。
そこでは君がいたずらっぽく笑って、まっすぐ僕を見返しながら、子供の漁師が捕った魚を自慢げに見せるように、繋いだ手をそっと掲げてみせた。
思わず鼻からふうと小さく息をつく。
そして握り込まれた僕の手を、そのまま下にぶんと軽く振り下ろした。
もちろんそこに振りほどく意図はない。
だからそのまま僕らの手は、意図的なブランコのように前後に振れ、やがて僕らの間で落ち着いた。
夕陽に向かって歩を進める。
行く先はまだ彼方だ。
君の手の温もりを感じながら、僕は少し目を細める。
ビルの谷間に鳥が舞う。
僕はそれを眺めながら、ふと君の横顔を盗み見る。
君も空いた手を額の上にかざし、夕陽が目の中に差し込むのを避けながら、同じものを見ているのが分かった。
僕らは、昇る夕陽を遠く眺める。
その脇には朽ちかけたビルの一面割れたガラスの壁と、足下には、舗装の裂け目からぼうぼうに草の伸びた歩道とが延びている。
驚いて僕は、ふと右隣を見る。
そこでは君がいたずらっぽく笑って、まっすぐ僕を見返しながら、子供の漁師が捕った魚を自慢げに見せるように、繋いだ手をそっと掲げてみせた。
思わず鼻からふうと小さく息をつく。
そして握り込まれた僕の手を、そのまま下にぶんと軽く振り下ろした。
もちろんそこに振りほどく意図はない。
だからそのまま僕らの手は、意図的なブランコのように前後に振れ、やがて僕らの間で落ち着いた。
夕陽に向かって歩を進める。
行く先はまだ彼方だ。
君の手の温もりを感じながら、僕は少し目を細める。
ビルの谷間に鳥が舞う。
僕はそれを眺めながら、ふと君の横顔を盗み見る。
君も空いた手を額の上にかざし、夕陽が目の中に差し込むのを避けながら、同じものを見ているのが分かった。
僕らは、昇る夕陽を遠く眺める。
その脇には朽ちかけたビルの一面割れたガラスの壁と、足下には、舗装の裂け目からぼうぼうに草の伸びた歩道とが延びている。