パパのおかげ!
小さな娘が遠慮無く感想を述べると、パパは苦笑いしました。
確かに、今度の賃貸物件は小さく狭いものでした。すきま風も吹き込んで、奇妙なゆらめきを見せています。
「ねえパパ、何かいきもの飼っていいの?」
「いいよ」
パパは、この物件が「ペット可」なのを理由に即答しました。
「わあい!」
と娘が喜ぶと、
「だめよ!」
とカブせるようにママが遮りました。
「ちゃんと世話をできないでしょう?」
「するもん! ねえいいでしょパパ?」
「う~ん……いいよねママ?」
パパは、今度の安い賃貸物件に負い目を持っていたので、小さな娘を喜ばせるためにとにかくメリットを役立てたかったのでした。
ママは、小さな娘に向かって言いました。
「ちゃんと世話するって約束する?」
「うん!」
「絶対に?」
「うん!」
こうして、一家の新生活が始まりました。
* * *
生き物は飼われては飽きられ、また別のものが飼われては飽きられしながら、長い長い、本当に長い時間が流れました。
賃貸物件内には、おびただしい種類と頭数の生き物たちが住むようになっていました。
そして一部の生き物が、鳴き声を上げました。
「うう、生きるのがつらいです。何とかして下さい。神様ひどいです」
と、小さな娘は、パパを真似た口調で言いました。
「生き物の面倒をちゃんと見れる人だけが、石を投げなさい!」
(了)