人形
彼女の1874回目の試みも、失敗に終わった。
主人たる人間のいなくなった世界で、自分と同じ機械人形を造ろうという試み。
自分の素体はある女性を素にしている。機械人形は人間の肉と骨と機械を組み合わせて出来ている。
よって彼女は本で得た知識を元に、外から人間の骨を拾って来ては、無人の工房で培養されていた量産型の為の肉と機械とを組み合わせ、魔導術式で動かしては失敗し、分解して、また新しい骨と機械の残骸を拾い集めて…………という作業を繰り返していた。
この世界には最早人間も彼女以外の機械人形も、残っていない。
広い世界のどこかには、生き残りがいるのかもしれない。だが、彼女が彼らに出会うことはなかった。
彼女は繰り返し、繰り返し、繰り返した。
何故そうするのか。
人間に命令されていたわけでもない。寂しいという感情も、機械人形の彼女は持ち合わせていない。
機械の体が壊れる日が来るまで、たった一人で過ごす、永い時間を恐れているわけでもない。
それでも彼女は繰り返していた。
何故か?
理由は彼女も知らない。
あるいは、人類の個を越えた記憶というものが彼女に使われいる骨や細胞の一片に刻まれていて、それが世界が滅びに瀕する今、同胞を求めるているのか?
「ギギ……ギ……」
言葉を話すことも理性もなく、やがて自己崩壊する失敗作たちを、彼女は見向きもしなかった。
「何が違うの。何がいけないの」
彼女は今日も失敗作たちを始末しながら考える。
彼女は、ただ繰り返した。
何故そうするのか、自分にも分からないままに。