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色々な掌編集

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先程とは違う歌手かと思うほど歌が身体に沁みてきて、私はいつしか涙ぐんでいた。遥か昔の片思いの恋を思い出しながら。


何てすてきな娘だろう 
夕暮れになると必ず 
我が家の前を通る
ハロー 声をかけると 
うつむいたまま走って逃げる
後ろ姿が 行き過ぎる 
君こそ僕の理想の人だ
僕のひとりごと アイラブユー

何をしている娘だろう 
多分恋人もいるだろう 
それを思うとつらい 
ハロー こっちを向いて 
僕はいつでも両手を広げ
君の来るのを待っているのさ 
いつかはきっと何かが起きる
僕のひとりごと アイラブユー

ハロー こっちを向いて 
僕はいつでも両手を広げ 
君の来るのを待っているのさ 
いつかはきっと何かが起きる
僕のひとりごと アイラブユー


曲が終わって、次の曲に入ったが、頭の中には「ハロー」の歌がまだ流れていた。
そして曲が止んで次の曲の紹介をしている時に、隣に誰かが座る気配がした。

横を向くと、妻だった。まったく予想もしていない私も私だ。仲の良い夫婦なら隣が空いたらすぐに移動してくるのが当たり前なのに。私は隣の人が席を立って空席になったのも知らずにいたのだ。

MCがまだ次の曲の話をしている間に、妻が私の方に体を寄せてきて、「ハローの歌良かったね」と小声で囁いた。私は「うん」と言いながら妻の横顔を見る。ああ、昔、こんな風に妻の横顔を見ていたこともあったんだ。

私は心の中で妻に声をかける「ハロー」

作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川