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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない

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社会人になると、いろんなイベントに参加したり、僕自身が様々な方と協力していろんな取り組みを行いました。
そんな中、ビジネスの手ほどきでお世話になっていたボスが、「長距離行脚したい」という事を仰いまして、関係者で企画会議を行いました。
これはお金儲けではなく、挑戦の意味合いが強く「出来ても出来なくてもいいか」と言う感覚だったはずが、アイデアが出るたびに皆本気モードになっていくんですよ。
『四国八十八か所めぐり』『東海道、東京~京都間』『オアフ島一周』なんかが候補に挙がりましたが、様々な理由で御蔵入り。
僕は『富士山登山』を提案していたのですが「普通過ぎる」と却下され、結局『琵琶湖一周』をやろうという企画を立ち上げられました。
それは誰もやらない、徒歩での『ビワイチ』です。

僕には100キロマラソンの経験があったので、すぐにそのスタッフとして声がかかりました。
でも本職でもないし、アドバイスできることなんか殆どありません。
当時、琵琶湖一周の距離は、湖周道路(琵琶湖の真横の整備道路)を使って約210キロでした。これは車で一周して計測したので、ほぼ正確でしょう。
僕には100キロ歩いたあの辛い経験があるので「素人がどう頑張っても200キロ完歩は無理だ」と主張しました。
するといろんな人から「マイナスのことなんか言うな」と言われてしまいます。
当時集まっていたメンバーは、各業界で活躍されているビジネスの猛者ばかりだったので、何でも挑戦したがるし、人を集めるのも上手だし、「やる気が無くなるようなことは言うな」という意味でした。
「とにかくプラス思考で行こう」という信念の持ち主たちばかりだったので、(諦めなければ何でも出来る)と信じているのです。
なので、僕は止めることが出来ませんでした。
何が無謀かと言うと、開催日程がたったの3日間。一日の踏破距離が平均70キロ。早や足で14時間以上歩き続ける計算です。
それはボスが会員だった、湖周にあるいくつかのホテルを宿泊地としたために、その位置に合わせたものです。
しかも開催予定日は、よりによって真夏。
絶対、誰に言っても「無理だろ」と言われるに決まってるでしょ?

「経験上、一日で70キロは無理です」
僕は繰り返し提言しました。ところが、
「いや、歩くだけだし出来るだろう」
皆もどれだけ大変か想像は付いていても、「やる」方向でしか話をしてくれません。
「いえいえ、それを3日間続けるんですよ。絶対無理ですって」
「お前、考え方ズレてるぞ」と、僕はまたマイナス思考と言われ叱られます。
こんなやり取りが何度も繰り返されました。
とにかく出来る出来ないは関係ないんです。皆こんな挑戦がしたいだけなんです。
「ただ、歩くだけじゃつまらないな」とボスが言います。そりゃそうでしょ。
「ついでにゴミでも拾いますか?」と誰かの提案がありました。
(ェエっえ~!!! 歩くだけでも大変なのに、ゴミ拾いなんて、スクワットとしながら歩くみたいなもんですよ!)
「それいいな。それに決まり」ボスの決断です。いつも早いんです。
これら猛者たち(普段のビジネスメンバー)の底力には、毎度感心させられてきましたが、今回もまた話が進むたびに新しいアイデアが出て、どんどん大きなイベントへと変化していきました。

夏休み期間中だから小中学生を参加させて「琵琶湖のゴミ問題を考えるシンポジウムにしよう」とか、「10キロごとに看護師や医者を配置しよう」「地元企業の応援を募ろう」「新聞の取材を受けよう」などなど。
僕はゴミを捨てる場所が必要だと考えて、琵琶湖周辺のキャンプ場やコンビニにお願いして、ゴミや空き缶回収の協力を得ました。
ボスは『FM滋賀(e-radio)』に話を持ち掛けて、この3日間、生放送のラジオ番組で、逐一実況報告を入れてもらうことになりました。
それでイベント名は『びわこ一周空缶ウォーク』と銘打たれ、協賛企業も見つかって僅かながらの資金援助もあり、参加者を募ると60名くらいが集まりました。
仲間内での挑戦のはずがここまで大ごとになると、「事故だけは絶対に起こせない」と、ようやくスタッフの顔色が変わります。
「やっぱり無理じゃないか?」こんなことを言う人も出始めて当然です。
「だから言ってるでしょ」
では何か手を打っとかないといけません。
医師の協力を得ようとしていましたが残念ながら協力者は出ず、僕は走り回った挙句、代わりに整骨院の治療師と知り合いの看護師でサポートしてもらうことになりました。
それでもたった一人の完走さえ無理に決まっています。
だから別の企画を提案しました。
それは、参加者全員が一周を目指すのではなく、部分ごとに参加してリレー形式で一周することにしたんです。
これなら安心です。

「お前、楽しようとしてるだろ」ボスの冷たい一言。
「苦しいの嫌ですもん」
「あかん、お前はそんなことで一周を諦めるような男じゃないよな」
「え? なんて無茶ぶりな」
「俺も歩くから」
僕とボスは気が合うから、東南アジアを二人で放浪したり、徹夜でボウリングのスコア200以上の特訓したり、深夜の長距離ドライブに連れまわされたりってこともあったけど、今回もボスは、無理でも僕と挑戦したかったみたいです。
年齢差18歳も上からこう言われるとね。やはり、ボスが一番の猛者ってことですね。