小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない

INDEX|131ページ/133ページ|

次のページ前のページ
 

【第5章:運転手】

いつものワイン会の前に、殿下が僕に「車を運転してくれはるか?」とお願いされました。
「どちらかにお出かけですか?」
「本宅に用事が・・・」
(このお屋敷は、妾さんと暮らすための家で、別に本宅があるんだな)と直感で思いました。
「私の車でご案内すればよろしかったですか?」
「いいや、ワシの車運転しとくれや」
一応説明しておきますと、殿下は普段、ご自分でお車の運転をなさるそうです。専属の運転手がいてもよさそうなのに(変だな)と思いました。
後日、ボスにその話をすると、殿下は車の運転がお好きだそうで、宮内庁か警察庁かどこかから支給された「黒地に金色の紋章のような柄のステッカーを持ってらっしゃる」と言うのです。
「なんですか? それ」
実はボスも殿下からそれを分けて貰っていて、運転免許の裏に貼ってあるのを見せてもらいました。
それは、多少のスピード違反くらいなら、警察にこのマークを見せると忖度してもらえる“免罪符”らしいです。僕の表現は不適切かもしれませんが、そんなことが現実の日本にあるんでしょうかね。
そして僕に運転を頼まれたその日は、殿下の腰痛がひどく運転が出来ないので、僕が来るのを待たれていたそうです。
(なんて光栄な・・・)僕は正直、そう思いました。(殿下が僕を信用してくださっている)のか(気に入ってくださっている)ように感じましたので。
しかし電動シャッターの車庫に行って驚きました。そこに駐められていたのは、茶色のバカでかい(バカとか言っちゃ失礼です)、とても立派なクラッシックカー“リンカーン・コンチネンタル・マークV”でした。

殿下は自ら助手席に座られました。
「ぶつけてもええよ。古い車やから」と冗談交じりに仰いますが、相当緊張していましたので、ゆっくりと発進させました。
僕は当時、左ハンドルのベンツに乗っていましたので、このアメ車を何とか運転できますが、表通りまでは無言です。
「どちらへ向かえばよろしいですか?」
「ああ、御苑へ向かっとくれな」
(京都御苑? 御所のある? やっぱり天皇家に所縁のある方は、御所の近くに家を持ってるのか)と、そんなふうに思ったのを覚えています。
道中、殿下は車自慢をされました。このお車がどういう謂れのものか、「(某)大使から贈られたのだ」とか、「安全の為、保険にお金をかけるくらいなら、こういう車に乗るべきだ」とか、あまり話の内容は入って来ませんが。
運転中、周囲の車は遠慮して、離れて走行されているのを感じました。確かにこれだと事故に巻き込まれにくいでしょうし、事故っても頑丈そうです。


【最終章:マジ?】

京都御苑に着いて側の大通りを走行していると、殿下が「そこの門から入っとくれや」と。
(??????????)また脳がバグってしまいます。
「え? 入るんですか!?」僕は驚きました。京都御苑の敷地に「車で入れ」と仰せなんだもの。
京都御苑は、天皇の御所以外、一般開放されてはいるものの、車両進入禁止だというのは誰でも判るでしょ。
僕は不安を感じながら、恐るおそる右折して敷地に入りその門をくぐると、その10メートルほど先には車止めのバリケードが。僕はその前で停車するしかありませんよね。
するとすぐ制服姿の皇宮警察が二人(殿下は近衛警察と呼称されていた)、走って来るのが見えました。
(ああ~、なんか質問されるぅ~)と恐怖すら覚えましたが、彼らは先ずバリケードを撤去し、この車に向かって敬礼、直立不動の体勢をとってるじゃないですか!
(あ? この殿下、本物だった・・・)
免許証の確認や何か声をかけられることもありませんでした。殿下の顔パスでスルーだもん。
僕は全身に鳥肌が立った状態で、京都御苑の中の砂利道へ車で進入して行きました。そして幅30メートルはあるその通路の真ん中を走らされました。
「ここは国に貸しとるだけやさかい」・・・冗談なのかどうか、正直意味が解りません。
(後で調べると、江戸時代に公家町があったこの地に、殿下の先祖が屋敷を構えられていたようです。そしてこの殿下は、『天皇』と『親王』の下の『王』の身位に当たるようでした)
僕は京都御苑内のある建物のそば(殿下の苗字が記載された○○邸跡)に駐車して、殿下の用事とやらを30分ほど、超ーーー緊張して待ってたら、その間、車の横にも皇宮警察官が一人、立ったまま警護されていました。
僕は一生で、こんな経験絶対出来ないことだと思ったけど、ボスも若い時、同じことを体験してたんだって。