続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない
その152 M&A 買収された
「やったー! 買収された!」・・・ってどういうことか解る?
ずっと秘密にしていたことで、嬉しいことがあったんで、人に話さずにはいられない。
実はここ5年近く、うちの会社を買ってくれる企業を探していたんです。
きっかけは、社長の体調問題。
脳に問題が見付かって手術入院された社長は、退院後、会社の将来を心配されるようになりました。
事業主というのは様々な責任を負いながら、リスクも背負っています。
「もし自分に何かあったら」と、口にされる機会が増えたんです。
家族に相続させようにも、相続税が払えないくらいの企業規模になり始めていました。
そこで、株式を分散してリスク軽減を図ろうとされたのですが、その当時は社員数40名程度の弱小企業です。まだ『有限会社』を名乗っていますので、誰がそんな株を買いたがりますか? 僕も嫌です。
でも社長が倒れられたら、やはり将来が心配です。
そこで僕に命じられたのは、売り上げを伸ばす事。つまり「買い手が付くように業績を伸ばせ」ってことでした。
普通、自分の会社が他社に買われるなんて、すごく心配じゃないですか? ネガティブなイメージが付きまといます。
それで僕も戦略的買収の『M&A』について、かなり勉強しました。
2社間の合意で、お互いのメリットの為に合併したり、子会社化したり、はたまた事業譲渡したりと様々なパターンがありますが、いずれも双方の話し合いで決めればいい訳です。
うちの会社の株は公開されていませんから、創業者と現社長が併せて100%を所有していますので、他社に不本意な買収をされることはありません。こっちの希望で買い取ってくれる先を探すのです。
でもこのM&Aの計画は、僕と社長の二人だけの秘密でした。僕の他にも事業部を持つ部長クラスがいるにはいるのですが、会社の売り上げの約70%を、僕の生産推進事業部の売上で占めていますので、その事業部長の僕にだけ相談されたのです。
5年間も秘密を守るのは辛かったですね。相手先企業とも秘密保持契約を結んで交渉しますので、家族にも秘密なんです。
もともと20年前に僕がこの会社の事業に参加した時は、社員数は10名以下でした。その業界ど素人なりにビジネスセンスだけの僕を、創業者から声をかけていただいて、先輩からはまるで殴る蹴るのスパルタで鍛えてもらいました。そして僕の自由にビジネスを展開させてくれて、売り上げを毎年伸ばして来たんです。僕が課長になって会社の売り上げの大半を叩き出すようになると、先輩方は肩身が狭いのか、次々と退職されて行きました。それでも僕に付いて来てくれる社員のおかげで、更に業績を伸ばし部長になった頃、秘密裏にM&Aの話が出始めたという訳です。
そこで僕は5年計画を立てました。この5年で売り上げを今までの倍にして、社員数を100人にする計画です。
こんなキッカケでもない限り、僕はそんな目標を立てるつもりはありませんでした。
見通しも何も立たないうちから、結構大きな目標です。でも僕は簡単に達成できると思っていました。走り出せば、道は勝手に開けていくもんですから。
今までの付き合いで、僕に協力してくれるビジネスオーナーはいろんな業界にいましたし、目標達成に執着したビジネスの進め方は、この会社とは無関係ですが、20代の頃からお世話になっていた、人生の師でもあるビジネスグループのボスに叩き込まれていましたので、やることは解っています。
ここでちょっと、これから会社の目標を達成したいと言う人のために、少しヒントを話させてもらいます。
大事なのは(何でも出来る)と信じることですが、プラス思考というのとは少し違います。
誰でもすぐ「プラス思考で行こう」と言います。でも誰でもマイナスの発言もしてしまいます。人間だもの(みつをw)
行動が伴わないプラス思考の人は、はっきり言って現場ではうるさいだけです。必要な発想は、上昇志向かどうかという事です。そういう人は困難を克服する力を発揮します。
上昇志向のある人に才能があれば、その人にすべてを任せてもいいです。でもやる気も才能もないのに、人の上に立ちたいだけの人(どこかの国の首相みたいに)や、口だけ挟んで行動に出ない人(少数勢力の野党議員みたいに)。こういった人に惑わされてはいけません。
そして、確信を持って言えることは「僕自身が一番スゴイ」と常に鼓舞し、それを結果で証明する意思を、僕は持っているという事です。
結果に責任を持って行動する社員は、しっかりサポートして伸ばしてやる必要がありますが、才能のある人は勝手に伸びてきますので、任せておけば、僕とは違うセンスで結果を出してくれます。こういう人に将来の会社を任せます。
では、今までみたいに僕のセンスで業績を伸ばすには、どうすればいいと思いますか?
社員数が10人程度の小さな職場なら、僕一人頑張れば業績は何とでもなるもんです。
でも100人に増員しようとすれば、一人ひとりを管理できずに自分勝手な行動が増えて、効率が悪くなり、むしろマイナスになってしまうでしょう。
僕が立てた目標を予定通り達成するためには、僕の才能を邪魔しない人、つまり僕の指示通りに動く従順な部下が必要なのです。
社長の体調は年々悪くなっていきました。(M&Aが完了するまで持たないんじゃないか?)そんな不安もあり、僕に社長就任の話も出ましたが、それは断りました。
実はこの会社の社長は、僕が在職中に4人も交代されています。もともとノリで作ったような会社だったから、責任感があまりない人が社長をしていて、初代は取引先に就職してしまうし、2代目はリーマンショックの際に資金繰りでノイローゼ、3代目は資金の私的流用まで起こし、管理職会議の動議でクビにしたくらいでした。
そして現4代目は、僕が台湾出張でよくお世話になっていた日本企業の台湾支社長が引退して帰国される際に、うちの社長に就任していただくようお願いした流れだったんです。
でも、健康に問題を抱えたままで社長業は続けられない。当然の判断です。だからって順番的に僕が社長に?
はっきり言って、僕が現場から退くと、今までの業務を引き継げる人材がいません。業績が落ちるのは目に見えています。社員の生活があるので、業績は伸ばし続ける選択を余儀なくされました。その方が僕にも金銭的メリットがあると思ったからです。
じゃ結局、次期社長はどうする? 大きな課題に直面しています。
また会社とは無関係ながら(ボスに相談して、誰かいい人材を紹介してもらおうかな)と、僕はそう考えていました。ボスの家族は全国で200社くらいの会社を経営していましたので、(一人くらいいい人材を回してくれるかも)って思っていて、気分的には余裕だったんです。