マクロ理論(続・おしゃべりさんのひとり言 111)
マクロ理論
2年前、娘は学校の成績が伸びずに悩んでた。
僕の教育方針通りにやってたからだと思う。
僕は娘の高校の授業がどんなレベルで、どんな内容なのか正確には把握出来ていなかったけど、「今はそれでいい」って言って来たんだ。
でも娘は、友達がいい成績を取ってると、差を付けられたように感じるらしい。
それでも「大丈夫」と言い聞かせて来た。
今回はまさに、娘自慢の『ひとり言』として聞いてください。ひとりよがりか個人の意見か。
過去に開催したビジネスセミナーでも好評だったテーマですが、娘の成長を見て、改めて自信を持って『マクロ理論』と名付けました。
経済学を語る時、『マクロ経済学』って聞いたことありますか? 反対に『ミクロ経済学』も。
大学の講座でこの二つの言葉を聞いて、あまり興味なかったんですけど、今は理解しています。
自分の財布の中身だけじゃなく、世界全体のお金の流れを知った方が、経済は語りやすい。
それを以って僕独自の解釈で、すべてのことをミクロに捉えず、マクロな視点から捉えた方が、何かに付けてうまく行くってことを経験して来ました。
大体の人って目先のことに翻弄されますよね。
これは仕方ない事です。先のこと予想してなかったのに、突然のトラブルなんて、どうしたらいいか分からないもの。
だから、初めての対応に戸惑いながら、「どうしようどうしよう」って。
一通り解決したら「ああ、こうしとけばよかったんだ」とか反省できるけど、最後まで知らないとそれもなかなか。
つまり全体を見て行動するのが『マクロな対応』で、目先のことに追われて視野が狭くなるのは『ミクロな対応』って言えば解りやすいかな。
こんなことを今までの人生でいろいろ経験して来たら、誰でもことをうまく運ぶには、全体を把握した上でモノを判断した方がいいって、気付くはずでしょ。
でも本当にその意味を理解している人は、ごく少数だと感じます。
僕はそれを知ってから、そうするように心掛けて来たんだ。
ことを始めやすく、効率的に進められて、且つ最後はうまくまとめる手法、それが『マクロ理論』
例えば、野球チームを思い浮かべてみて。
ピッチャーは投球練習だけすればいい。バッターは打撃練習だけすればいい。
そう考えるのは当たり前だけど、両方やった人は『二刀流』とか言われるから、その方がいいよって話でもない。(そんなスーパースターには該当しない理論だから)
専門のポジションとか役割に徹するのは、そうした方が、その能力をより引き伸ばす近道だからなだけで、チーム内でその手分けをしてるんですよね。
チーム全体で見たら、誰がどのポジションに適してるかをよく考えた上で、役割分担をしたいけど、個人の希望だけで「ピッチャーやりたい」って言っても、うまくことが進まないかも。
個人希望はミクロで、チーム全体を考えたらマクロってこと。
だからマクロに考えた方が、うまく行くってことが多いんです。
ところがうちの会社の社長は、ミクロに社員個人の希望を聞いちゃう。
だから、皆やりたいことや着任したい部署の希望を言う。
実力のある人だったら、そうしてもいいんだけど、社長はどんな人にも聞くだけで「後は頼んだぞ」
社長に聞かれたら、そこに行けるって誤解してしまって、今の部署での仕事がいい加減になる。
ゆえに、こんな人は希望先に転属させられまい。
この人を『どこに配属』させてあげれば、やる気が出て効果があるか、そんなことを考えるのは正しいって思うでしょ。普通は。
(そこに配属させてもらえたら、バリバリ仕事頑張るぞ!)なんて思うかもしれないけど。
でもそうじゃないんです。配属先にこそ希望を聞いて、『誰を異動』させるかの方が大事なんです。これこそがマクロ対応。
(希望先に配属されるように実力を付けよう!)と社員に意欲を持たせることこそ、組織づくりには役に立つことです。
つまり(実力が伴ってる人を、何番バッターに据えようか)って考えるのと同じこと。
「4番打ちたい」って言う人を、誰でもそのままバッターボックスに送れるような、スターぞろいの強豪チームなら話は別ですけど、うちの会社はそうじゃないから。
また「物事を積み重ねる」って表現します。
だから経験を積み重ねるのは大事だって気がします。
それも正しいです。でも、これはミクロな視点で出来ることです。
こと重要なものに関しては、積み重ねてちゃダメなんです。
積み上げられなかったものこそが大事ってこともあるし。
イメージで言うと、袋に詰め込むようにしないと。マクロにあれもそれもこれも全部。
例えば、植物で言うと、タンポポはちっぽけな花です。
一株にひとつしか花を咲かせません。
その花が咲くために、葉っぱをいくつか付けますけど、花は一つです。
これなら、根っこから吸った水分は一つの花に集中していいし、葉で作られる栄養も一つの花の為で、ミクロに見てても間違いは起こらない。
自分が小さい花でいたいならそれで十分。独立した多くが集まれば草原が出来ます。でも競争が嫌で、一人で居ちゃ意味ないですよ。
じゃ大木ならどうでしょう?
根から吸い上げた水をどの枝に送るかによって、樹形が変わります。
目先の枝しか見ていないと、反対側の枝は育ちません。花だって咲きません。実もなりません。
つまり、樹形全体をマクロに見ることが大事なんです。
すべての枝の葉の数が何枚あって、どこにどれだけの花が咲いて、どれくらいの大きさの実を生らせるかを、初めから知っていないと、行き当たりばったりでは、なんとなくしか実は生らないと言う訳です。
学校教育は生徒に対してこうするべきところですけど、先生はそれを理解してるのかな?
チームやグループに属するなら、当然の考え方なんだけど、一匹狼気取る人いるよね。
それでもなんとなく生活出来てたんですよね。今までは。
このなんとなくの結果で生活して来た人は、日本の経済力が衰退した今、ボーダーラインをクリア出来なくなって、生活にも困ることになりそうです。
目先のことをこなして積み重ねた結果どうなったかじゃなく、自分が用意した袋の大きさに合ったものをどんどん詰め込んでいくことが大事って話なんだけど、理解してもらえるかな?
今年になって、娘の成績がどんどん上がって来ました。
2年前はまだ勉強すべき内容のほんの一部だけしか授業でやってないから、それだけでいい点取っても、順番に積み重ねて行くのと同じことでしょ。
友達は、中間試験、期末試験の度に一夜漬けして成績を引き上げる努力をしていたんだと思うけど、娘には大学受験に必要な事を、すべて把握させるような順番で勉強させて来ました。
それには納得出来る塾の方針に合わせる必要があった訳だけど、結果うまく行きました。
すべての教科をマクロな視点で捉えて、志望大学に必要なことを満遍なく習得して行ったことで、最近は模擬試験の成績が急上昇。友達より頭一つ出るようになって来たという訳です。
つづく
作品名:マクロ理論(続・おしゃべりさんのひとり言 111) 作家名:亨利(ヘンリー)