ひとりしずか シーン5「お風呂」
シーン5「お風呂」
浴槽に浸かる音
「はぁ〜〜〜」
「(一人暮らしをしてわかったこと・・・)」
「(お風呂は水道代やガス代のことが気になってしまう。)」
手のひらを顔に当てる(腕が水面から出る音)
「(でもやっぱり、肩まで浸かった方が良い、ということ)」
「はぁ〜〜〜〜。 狭っ。」
「(いかに節約できているか、一人暮らし同士の会話には、こんなマウントの取り合いがしばしば出てくる)」
「(そして一番お金と時間を減らせるのが、おそらくこの入浴の時間。シャワーで済ませちゃえば自由な時間も増えるし光熱費も浮く)」
「(同じタイミングで一人暮らしを始めた同期は、水道とガス代だけで5000円以下って言ってたな・・・。)」
「(自分で稼いでるお金だし、そこまでジリ貧ってわけじゃないけど、
なんか悔しい。 うちはプロパンだから、ガス代だけでもう負けてるし・・・。)」
「(・・・でも、やっぱりお風呂は浸かりたい。)」
「(毎日毎日忙しくて、自分の時間なんて全然作れないけれど。 この時間だけは唯一、何も気にせずゆっくりできる。)」
「(肩まで浸かりながら、スマホで通販サイトをぼーっと観ているこの時間が、何よりも幸せだ・・・。)」
「(お酒もほとんど飲まない、タバコもしない、もちろんギャンブルも。ブランド物も今は興味ないし、お金がかかるような趣味も特にない。 ならせめて、毎日のこんな時間くらい、ちょっと贅沢しても良いよね・・・。)」
「そろそろ出よかな」
湯船から上がる音
風呂の椅子をずらす音
おけで掬(すく)ってお湯をかける音
シャンプー→頭洗う音 しばらく流してフェードアウト
B G M
浴室の扉が開く音
「ふぅ」
作品名:ひとりしずか シーン5「お風呂」 作家名:平塚 毅