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ニルヴァーナが鳴り響く

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死が僕のことを見張っている。これは本当さ。言っておくけど、これは比喩でもなんでもないよ。死は姿を隠して、僕が弱っていくのをじっと待っているんだ。辛抱強くそれを狙っている。まるで廃屋の隅にある蜘蛛の巣にじっとしてる捕食者のように。僕は死の気配を感じているし、匂いも感じている。なんていうか、絶対的な力が作用して、僕の何もかもが一瞬で蒸発してしまうのではないかと感じる時があるんだ。死の圧を感じる時。なんらかの理由で僕の心に隙ができた時、死は優しい声で囁く。

 どう? 疲れちゃったのかい? 楽になりたくないかい? 一瞬さ。さあ、迷うことはない。

 この死ってやつは、僕が頭を振って黙れと言うまで、こんなふうに甘美な響きを持った言葉を耳元で囁き続けてくるんだ。そして僕が気付かないふりをしている時は、死は僕に語り出す。独り言のように、そしてあらかじめ用意されていたセリフのように。

 私は君の死そのものだが、概念に過ぎない。それは分かってもらえるかな。だから君がいくら私の気配を感じとったとしても誰にも姿は見えない。ずっと背中にくっついている何かが君に見えないのとはわけが違うよ。私は概念だから実在はしないんだ。試しに背中を鏡で見てみるといいよ。

 私は普遍的な君の側にいる概念だが、呼び出したのは君の方なんだよ。君が私をパートナーに選んだのだ。僕はそこまで聞くと耐えきれなくなって、力を振り絞って、ふざけるなと叫んだ。すると死の気配がスッと消えて行った。

 僕は考える。なんで死がパートナーなんだ? 僕がいつ死をパートナーに選んだって言うんだ?

 誰かが言っていたんだ。死を御守りとして生きてきたって。僕はその言葉を聞いて、泣きたくなった。そうだった。いつでも死ぬことはできる。そう思って生きてきたんだっけ。だから、あいつはパートナーって言ったのかもしれない。人は必ず死ぬのだから。

 死がそこにいるのが分かる。気配で分かった。パートナーが僕の命を狙っていた。

 ずいぶんと疲れているね。私が言いたいこと、君なら分かるね? あと少しかな。

 この誘惑に抵抗する気力がなくなった時、きっと僕は死んでいくのだろう。あいつは息を潜めて僕を殺す隙を狙っているんだ。その瞬間。今がまさにこの瞬間さ。

 僕は誰かに操作されているのかな。おそらくあいつだ。死は僕の手に銃を握らせ、こめかみに銃口を突きつけてきた。あとはやるだけだ。

 音楽が鳴り響く。ニルヴァーナだ。カートの声が切なかった。カートの青い目が切なかった。涙が止まらなかった。

happy song