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家庭それぞれ

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その4



何日間かわずかの期待をして病院へ通いましたが、お腹の中にばい菌が入ったからと強い薬が処方されました。その翌日のことです。病院から呼び出されて出かけたら夫は寝かされていましたが、長くかかるようなのでその晩は病院へ泊ろうと思い、一度家に帰って支度をして出かけました。

治療室に入ったとき、何人かの医療者が囲んで血圧計を見ていました。私が見たときは上が75でしたが、瞬く間に下がりゼロになりました。ご臨終です、と言われ、私は娘達にメールをしました。何かあったら呼んでねと言ってくれた友達に電話をしたらすぐ来てくれました。

病院での簡単な儀式を終えて遺体が我家に運ばれました。
葬儀は誰にも知らさなかったけれど、同級生や私の友達、生家の人、色々な人が連絡しあって何十人も来て下さり、有難く思いました。広い家の二階に祭壇を飾りとても賑やかな葬儀となりました。

娘ふたりと小一の孫が戻って来ていて、主なることは娘たちが遣ってくれました。私は涙は出ませんでしたが、ほっとしていました。夫の暴言を恐れずに過ごせるということもありましたが、苦しそうな病院での最後の状態が終ったという安堵感でもありました。


作品名:家庭それぞれ 作家名:笹峰霧子