circulation【3話】黄色い花
もし、フォルテが幻惑から覚めたとき、全ての記憶が戻っていたとしたら
フォルテはこれからどうするんだろう。
家のあった場所へ帰りたいと言うんだろうか。
村を出ていた親戚だとか、そういった人が居る可能性だって無い事は無い。
けれど、私が今一番怖いのはそうじゃなかった。
もし、もしも、フォルテが目覚めて、また全てを忘れていたら……。
自分の名前も、私達の事も、みんな忘れてしまっていたら、私は……。
ぎゅっと、スカイの手が、フォルテの手を握る私の手を上から握った。
見れば、抱えていた衣類は草の上に投げ出されている。
ずっと濡れた衣類を抱えていたスカイの手は、ひんやりと冷たく、心地良かった。
作品名:circulation【3話】黄色い花 作家名:弓屋 晶都