河で童の川流れ(続・おしゃべりさんのひとり言 102)
102河で童の川流れ
息を止める。水に顔を浸ける。体を一直線に伸ばして力を抜く。
そうすれば浮かぶでしょ。
先ずこの基本を知れば、あとはバタ足をする。手で水をかく。
そうすれば前へ進むでしょ。
手のひらで水を押し下げれば、顔を水面に上げられる。
そうすれば息継ぎできるでしょ。
夏ですね・・・。夏の事故に注意喚起します。
僕は子供の頃から、泳ぐのが大好きです。
幼稚園のプールで水遊びがあったので、バチャバチャしていたら、両腕を交互に回しながら泳ぐ友達を見て(スゴイ!)と思って真似すると、簡単にできた。
その頃、近所の何軒かの家族と海水浴に行った時、3歳年上の隣のお姉ちゃんに泳ぎ方を教えてもらって、バタ足でもちゃんと進めるようになった。
こういう経験があれば、自分で泳ぐ練習をして、上達するもんだと思うんですが、油断は禁物。
僕は小学の時、水泳教室に週3回通って、学校でも1,2を争うスイマーになった。
飛び込みも得意だし、中学で10メートル高飛び込み。高校で50メートル潜水もできた。
泳ぎに自信あったけど、その当時でも、遠泳以外で川や海で遊ぶ際は、必ず浮き輪を使用した。
スクールのプールでさえ溺れる怖さを何度か経験していたので、自然相手に油断はしたことが無かった。
娘が生まれて、泳ぎに連れて行く際は、例えプールでも簡単なライフジャケットを着けさせていた。
3歳くらいの時に、海で着けた子供用のジャケットが少し大きくて、水に浮かぶとジャケットの中で、顔が水面より沈むことがあって、妻とのおしゃべりでちょっと目を放した瞬間、
「たすけて!」と早口で言うのが聞こえた。
振り向くと、波の上下動に合わせて、娘の顔が浮かんだり沈んだりしてる。
水面に出た瞬間に発した「SOS」のおかげで命拾いした。
その経験から思った。
僕は泳ぎがうまくなることが、溺れることから身を守る方法だと信じてたけど、そんな根性論で捉えずに、正しい補助具を着けることも、大事なんだって。
今年、京都の嵐山の保津川の川下りの小舟から、船頭が急流に投げ出されて亡くなる事故があったってニュースで見たけど、事故後は船頭含む乗船者全員が着用する救命胴衣を、もっと有効な商品に変更したそうだよ。
僕は娘のSOS以降、娘には両腕に通して上腕肩口に取り付ける浮き輪を買って、一人で水に浮かんでいても、絶対に顔が水面下に沈まないようにした。
これ安いのに効果抜群で、知り合いの親がみんな真似して買ってた。サイズはほとんど関係ないから長く使えたし。
そんな娘も小学時代に水泳教室に通って、基本4泳法はマスターして、体力が続く限り、いつまでも泳いでいられるようになったのでもう安心です。
でも・・・
毎年夏には、川で溺れる子供がいます。
カッパという妖怪は泳ぎが得意で、河の児童と書いて「河童(かっぱ)」と読ますんですよね。
昔はどんな子供でも、夏には必ず川遊びして、泳ぎが得意だった背景があるから、そんな当て字が使われたんじゃないかな?
最近の子は、暑い夏に泳ぎに行くより、涼しい家でゲームすることの方が多いだろうし、(泳ぎの技術は基本的に持っていない)と思った方がいいですよね。
「カッパが子供を川の中に引きずり込む」なんて伝承もあるくらいだから、昔から川で溺れる子供は、やっぱり多かったんじゃないかな。
「近くに親が付いていても溺れてしまった」なんてことをよく聞きます。
なぜなんだろうと、真剣に考えてみました。
僕も娘のSOS経験から、ほんのちょっと目を離すと、「運が悪く」ってことも起きうるんだって痛感しましたけど、それでもずっと監視し続けるのは無理かも。
もし子供が、底に足が着かないようなところで、浮き輪なしに泳いだのだとしたら、溺れそうですよね。
それは誰にでも想像できます。だからこんな時には、100%の警戒モードです。
でも浅瀬でも溺れるんですよ。油断しがちじゃないですか?
でもほとんどの人が考え付かない危険が、浅瀬にこそあるんです。
どう想像すれば、それが理解できるか説明しますね。
大人は(このくらいの浅瀬で、川遊びさせるくらいは大丈夫)って思うんでしょうけど、子供にしたらそれは違います。
小学1年の子の身長が120センチだとしたら、水深が50センチあると、水面はその子の腰より下になります。
一見安全そうに思えますよね。むしろ浮き輪を使うと邪魔なくらいに感じます。
でもその子の腕の長さは、50センチくらいでしょうか?
そうすると、水の底には手を突けないのが解ります。
軽い体重の子供は、川の流れに押されたら、簡単に転んでしまうでしょう。
それで流され始めて慌てても、泳ぎ方を練習した子なら、力を抜いて水に浮かび、顔を水面に出す事を優先するでしょう。
でも、泳いだことのない子供ならどうするでしょうか?
きっと慌てて立ち上がろうとします。
水流で倒れたという事は、下流に向かって倒れているので、頭は進行方向(川下)にあります。そうすると流れる水の中で、足の力だけで立ち上がろうとしても、また背から押されて、つんのめるように倒されてしまいます。
息の続くうちは、そうして何度かトライするかもしれませんが、うまく立てないと焦り、慌ててしまうはず。
すると必ずやってしまうのが、手を突いて立とうとする動作です。
でも川底に手を突くと顔も水面に沈みます。
つまり手を突こうとすると、絶対に息が出来なくなってしまうのです。
運よく浅瀬に流されるといいですが、川底はもっと深いところに向かって傾斜しているので、そこに足を突くと深い方へ倒れて引き込まれるのです。
つまり立ち上がれないことで、顔を水面に上げることが出来ずに溺れてしまうのではないでしょうか?
大人はこの腕の長さと水深の関係を、もっと知っておくべきですが、どんなメディアでもそんな話はしていません。
足が着くかどうかより、「腕の長さより深いところは、溺れるリスクが高い」と認識して、夏を楽しんでほしいです。
つづく
作品名:河で童の川流れ(続・おしゃべりさんのひとり言 102) 作家名:亨利(ヘンリー)