【後編】OVER HEAR -オーバ―ヒア-
第3幕「後編」
白井ユウ :高校2年生の女の子
立花アイ :高校2年生の女の子。
謎の女性 :研究のこと以外にはあまり関心はないけれど、困ってる人に対する共感力が強い。
ラヒ :謎の女性が作成した補聴器。Siriやアレクサのような機能も備わっている。
女友達 :アイちゃんの所属する演劇部の女の子。思ったことをすぐ口にしちゃう。
アイ「早く私を見つけて」 →電車の走る音
ユウ「うっ(るさ) ラヒ!アイの声のボリューム上げて!」
アイ「ラヒ、オーバーヒア」
ユウ「なんでアイが・・・」
ユウ「サーチ、アイの声!」
ラヒ「南東132°、距離134m。マップに表示します」
ユウ「あっちか!」
走る
ユウ「フッ、フッ。 居ないし。 てかなんで逃げてんのよ。」
ユウ「ラヒ、オーバーヒア!サーチ!アイの声!」
ラヒ「南191°、距離27m。マップに表示します」
ユウ「27m?まだそんな移動してないのに・・・。サーチ!アイの声!」
ラヒ「西290°、距離69m。 マップに表示します。」
ユウ「はぁ?全然位置違うじゃん。何これバグっ・・・あぁ。」
ユウ「色んなとこにあれ置いてんのか…」
ユウ「ラヒ、オーバー」
ユウ「(いや、ボイスレコーダーこんなに置いてあるなら、サーチはもう頼りにならないか・・・)」
ユウ「はぁ、なにが私を見つけてよ。だったら早く目の前に来いって話だし。てかなんで逃げてんの。」
ユウ「ふっ、あんな決め台詞みたいな感じで言っちゃって。 タイミング合いすぎでしょ。」
ユウ「・・・・いくらなんでも合いすぎてた気が。」
ユウ「もしかして・・・私があのボイスレコーダーに近づいたところを・・・見てたんじゃ。」
ユウ「あの場所から私の姿を確認できるのは・・・!」
走って駆け上がる
ユウ「ハァ、ハァ・・・。アイ!」
ユウ「ここにも、居ないなんて・・・。」
ユウ「あークッソ低血圧。 フラフラしてきた。」 →草木にかかる音
ユウ「きゃあ!」
ユウ「ヤバい、ラヒが、ラヒが無い!」
アイ「ユウ・・・」
アイ「どうしよう、私のせいで」
<ラインでのやり取り>
アイ「風邪?」
ユウ「ううん、耳が聞こえなくなった」
アイ「え!?大丈夫!?」
ユウ「全然良くならない」
アイ「病院は?」
ユウ「来週もっかい行くつもり」
アイ「最寄駅のとこ?」
ユウ「うん。」
アイ「(ラインの返信に困り、『うーん』という声が漏れる)… 大丈夫だよ。」
<アイの自宅>
アイ「お母さん!」
謎の女性「どーしたいきなり」
アイ「友達が、耳の病気になって、それで聞こえなくなっちゃって。 もう一つラヒを貸して欲しいの!」
謎の女性「・・・いつまでに貸せればいい?」
アイ「できるだけ早めに!」
謎の女性「わかった、1週間で完成させよう。 その代わり、学校が終わったら直帰で手伝ってくれ。」
アイ「うん!」
謎の女性「アイのラヒはなんともないか?」
アイ「うん、調子いいよ。」
謎の女性「…自分のためだけに使ってないか?」
アイ「そ、そんなふうには使ってないよ」
謎の女性「そうか。まあ好き勝手使うなよ? これは、大切な人を救うためにあるんだ。」
アイ「うん、わかってる」
<街中>
謎の女性「なんで私が届けにゃならんのだ・・・。」
アイ「私が行ったら訳わかんないじゃん」
謎の女性「友達なんだから素直に渡したら良いじゃないか」
アイ「そういうわけにはいかないの! あ、いた!」
謎の女性「あの子か。はぁ…。 (歩く音) あぁおい、大丈夫か?急にうずくまって」
ユウ「もうやだ・・・死にたい・・・死にたい・・・」
謎の女性「・・・」
※肩叩く音
謎の女性「よく頑張ったね。 ほら、こっち着けてみて」
アイ「ユウ!」
ユウ「あ、おはよ」
アイ「耳、大丈夫・・・?」
ユウ「あ、うん、なんとか」
アイ「よかったぁ・・・。 それ、いいね。」
ユウ「補聴器が?」
アイ「うん!」
<部室 休憩中>
アイ「腹筋きつー…1週間だけでこんな体が鈍るなんて・・・。 ユウ、なんともないかな。
ラヒ、オーバーヒア。集音、ユウ。」
佐藤くんと楽しく会話してる声
アイ「・・・楽しそう」
<部活終わり>
アイ「はー疲れた」
女友達「ねえねえ、白井さん耳になんか変なのつけてたよね」
アイ「別に変じゃないでしょ」
女友達「なんであんなの着けてるの?笑」
アイ「耳の聞こえが悪いんだから仕方ないじゃん」
女友達「あたしなら恥ずかしくて着けらんない笑」
アイ「恥ずかしいって…」
女友達「髪で隠したら良いのにね」
アイ「そんなことしたら、聞こえなくなるでしょ」
女友達「そういうもんなの?」
アイ「そういうもんなの」
女友達「ふーん、知らなかった」
<廊下>
アイ「あ、ごめんお待たせ」
ユウ「今日はちょっと…一人で帰る…」
アイ「え…なn」
ユウ「じゃあね」
アイ「・・・あそっか、佐藤くんが待ってるのか。 そっち優先するよね・・・。」
アイ「私が聞こえるようにしてあげたのに・・・。」
<現在>
アイ「お母さんに言われたのに・・・わたし・・・。」
アイ「ラヒ!オーバーヒア! サーチ!ユウ!」
ラヒ「北9°、距離109m。 マップに表示します。」
アイ「ごめん・・・ごめん・・・!」
アイ「ユウ!」
ユウ「・・・やっと見つけた」
アイ「私・・・ごめん・・・! 一緒に探すから!」
ユウ「もうあるよ」
アイ「え? じゃああれって」
ユウ「外れたなんてウソ。 来ないんなら呼んでやろうと思ってさ」
アイ「なぁんだ・・・。 えへへ、ごめんね。」
ユウ「ったく。 ほら、帰るよ」
アイ「うん」
作品名:【後編】OVER HEAR -オーバ―ヒア- 作家名:平塚 毅