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叶わぬ夢

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その4


教習のときにバスの中で偶然で出合った男のことを知った小学校の女教師が、彼と私を引き合わせようとして場所と時間を指定してきた。言われればその通り従う純情な私と似たような性格の男性はその喫茶店で会うことになった。

教習が終り夏休みが終わった時、私は電車で大学に戻ったが、その朝彼は勤務先の運動場で手を振って見送った。「汽車の窓からハンカチ振れば・・」という昭和の歌があるが、あんな昭和の光景だ。

そのご三年生の秋から四年生に掛けて私達は文通をしていた。どちらもまじめを絵に描いたような性格で、私が手紙を書くと、少し遅れて返事が来たが、私はそれを読むのがとてもうれしかった。
かといって彼の事ばかり考えていたわけではなく、勉強はしっかりとしていたし、しょっちゅう長引く風邪の為よく学校を休んで医者に行ったり寝込んだり、また元気なときは独りで隣町へ洋服や靴を買いに行ったりした。

私が寝込んだとき母は公的機関の医師として勤務していたが、休みをとってはるばる来てくれた。その度に、専業主婦だったら職場に気兼ねなく来れるのにと言っていた。



作品名:叶わぬ夢 作家名:笹峰霧子