叶わぬ夢
その7
翌年長女が産まれ、義母の来る回数は多くなった。
義母は私が昼寝ができるように赤ん坊をおんぶして近辺を歩いてくれていた。
今思うと随分恵まれた環境で子育てをし、実母の元で何不自由なく暮らしていたが、私はなんとなく幸せを感じていなかったような気がする。
そのご子育てが巧く行かなくなり何年も苦労したが、結果的には二人の娘は強い子に育ち、現在は仕事も指導する立場になっている。
ふと頭をよぎるのは栄養学校を卒業したばかりの若い時に通り過ぎた或る人のこと。夫とうまくいかずやりきれない気持ちのとき、夢に出て来た優しい顔。夢の中の思い出の人に慰められて立ち直り、生涯を共にした夫との生活。
叶わぬ夢ではあるけれど、もしもう一度生まれ変わることができるなら、私は音大に行き、初恋の彼と結婚する、そんなことを時々おもうときがある。
完