祈り
おじいさんが、山小屋にひとりで住んでいた。
人付き合いもほぼ無く、クリスチャンだったが教会にも行かず熱心でなかった。
木工細工を作って売ることで、細々と生計を立てていた。
さて、とある日のこと。
いつものように野山に出かけて木の実や山菜を集めて戻ってくると、きな臭い匂いが漂っていることに気づいた。
何と、山小屋が火事になっていたのだ。
おじいさんは慌てふためいた。
「何てこった! ああ! ああ!」
そして胸の前で両手の指と指を組み合わせ、天を仰ぎ見て叫んだ。
「え~と、顔は思い出せるのに名前が出てこん!」
(了)