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シンデレラストーリー

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昔々、シンデレラという、心も顔かたちも美しい娘がいた。
 そもそも高貴な血筋なのだが、母親を早くに亡くして父親が再婚すると人生が暗転。義母とその娘たちによって召使のような扱いに落とされ、屋根裏部屋での生活を強いられるようになっていた。

 そういう日々が続く中、お城で、王子の結婚相手を見つけるための舞踏会が開かれることが決まった。
 その日、義姉たちは着飾って出かけたが、シンデレラはいつも以上にたくさんの仕事を押し付けられ、お城に行くなど望みようも無い。
 それでも、ひとりぼっちでも健気に仕事をしていると、シンデレラの名付け親である魔女がやってきて、魔法によって準備を整えてくれた。かぼちゃを馬車に、ねずみを馬に、ぼろ服を華麗なドレスに仕立ててくれ、そして最後に言い添えた。
「いいかい、時計によく注意なさい。この魔法は十二時になれば消え失せてしまうから、必ず十二時までにお城を出るんじゃよ」
 シンデレラはうれし泣きしながら、「本当にありがとうございます」と礼を言った。また、「はい、時計によく注意します。必ず十二時までにお城を出ます」と答え、舞踏会に出かけた。

 さて、遅ればせながらシンデレラが舞踏会に加わると、シンデレラの美しさはすばらしい輝きを放った。
 それは当然王子の目にも止まり、王子は一緒に踊ってくれるように願い出た。そして、シンデレラの夢のような時間が始まった。王子はシンデレラだけと踊り続け、愛の言葉をささやき続けた。意地悪な義姉たちが無視されたのはもちろんのこと、お城の召使たちによる奏上も「伯爵の娘は父が勝手に言ってるだけだろう? 僕はこの人と踊りたいんだ!」「隣国の姫は母が勝手に言ってるだけだろう? 僕はこの人と踊るんだ!」などの叱責をもって無視され、屋根裏部屋で暮らすみじめなシンデレラのプライドを大いに癒した。

 そうして過ごしていると、突然時計が十二時を打ち始めた。幸せな時間に溺れて、シンデレラは魔女との約束をすっかり忘れていたのだ。
 シンデレラは、大慌てで駆け出した。
「とても楽しかったけれど、もうここまで。ああ王子様……どうか追って、こないで下さい」
 そうつぶやくシンデレラだったが、本当の想いはどうしても残る。走りながら振り返って、シンデレラは叫んだ。
「うぎゃー!」
 そしてぱたっと倒れて、動かなくなった。魔女から注意された十二時なんて、もうどうでもよくなった。ドレスがぼろ服に戻ろうが、馬車がかぼちゃに戻ろうが、もう知ったこっちゃ無かった。このまま引きずられて退場させてもらえばいいや、と思った。
 王子は、シンデレラを見てもいなかった。あっという間に他の女に引っかかってデレデレになっていた王子の姿に、シンデレラはうめいた。
「砂時計みたいな体に負けた」

(了)
作品名:シンデレラストーリー 作家名:Dewdrop