毒蛇
そしてガイドのおじさんと一緒に歩いている最中に、事件は起こった。
「きゃあああっ!」
突如現れた毒蛇によって、彼女は脚を噛まれてしまったのだ。
「コノヤロ! オイコラ、アッチヘイケ!」
ガイドのおじさんは急いで毒蛇を追い払うと、倒れた彼女の、噛まれた痕を見定めた。
「コレハ、タイヘンナコトニ、ナリマシタ。デモ、マカセテクダサイ。シツレイシマス」
「あっ……」
ガイドのおじさんは、彼女の脚に吸い付いて毒を吸い出しては吐き、吸い出しては吐きし始めた。
……その手際よい、献身的な働きに身を任せていると、彼女はヘンな気持ちになってきた。
そして彼がその反復をし終えた後、彼女はトロンとした表情で言った。
「ありがとうございました。本当に助かりました」
「ドウイタシマシテ」
彼女は、ガイドのおじさんを見つめて申し出た。
「お礼に……お礼に、あなたのも吸い出して差し上げます」
「……エッ?」
ガイドのおじさんは、何を言われたのか信じられない、といった表情で彼女を見返した。
彼女はトロンとした表情でガイドのおじさんをじっと見つめて、繰り返した。
「あなたのも、吸い出して差し上げますよ」
するとガイドのおじさんは嬉しさとスケベさを隠し切れない表情になり、彼女の気が変わらぬうちにと大急ぎで自分の脚を毒蛇に噛ませた。
(了)