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人生の織物

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その4


大学を卒業と同時に文通をしていた高校の同級生と結婚した。二年あらきで二人の女の子が生まれた。卒業しても身体が弱かったので、母は心配して出産のときは総合病院の腕の良い医師に頼んでいて、産気づいた真夜中に病院まで来て待機してもらっていた。

長女は産まれたてのときは白い蛙のような顔をしていたので吃驚した。
何日か経って、ベッドの横に赤ん坊のベッドが並んだのをうっすら覚えている。何事も初めてのことなので、赤ん坊がお乳を吸うと恥ずかしいような気分になった。

次女は産婦人科を開業していた叔父の病院で出産した。どちらの子供も母や義母の計らいで産後の世話をする人がやってきて、一ヵ月ぐらい世話をしたので、私は呑気にお乳を飲ますだけでのんびり過ごした。産後に無理をすると頭が可笑しくなるということを慮ってのことだった。

その頃夫は職業を変えたばかりで精神的に不安定な状態だったので、勤めが終ってからすぐ帰宅して赤ん坊を見ることはなかったが、母と叔母が一人ずつの子供の面倒を見てくれた。

夫は自分の憂さを晴らす為に、毎日勤めが終ると碁会所に寄って帰宅していた。昼は母や叔母が子供の守りをしてくれたが、夜になると遅くまで帰らない夫を待って、私は幼子二人を相手に過ごしていた。

父親が家に居ないというこの状態は何十年も続いたので、私も子供達も家族の団欒を味わうことなく暮らした。子供も多分家族の団欒という喜びを知らなかっただろうし、私も寂しい思い出だけが記憶にある。

作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子